当院の漢方著効例7

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301.のどのつまりと首の違和感の漢方治療

次の症例は43歳、女性です。
平成23年5月頃よりのどのつまった感じが出現、平成24年5月頃よりは、首の違和感(ひもでゆるくしばられたような感じ)も出現したため耳鼻科を受診されましたが、「異常なし。」といわれ、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう症例64、102、103、217参照)を処方されました。しかし、一ヶ月半ほど服用してもあまり改善しないため、平成24年7月26日漢方治療を求め赤穂市から来院されました。
身長153cm、体重42kg、BMI17.9とやせを認めます。
他の症状として、薬で胃があれやすい・肩こり・体がだるい・疲れやすい・手足の冷え・気分が沈むなどがあります。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、白苔と歯痕舌を認めました。
「気虚(脾虚;症例97参照)」+「気滞(症例102、103参照)」と診断し、「気虚」に対して六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291参照)を、「気滞」に対して香蘇散(こうそさん;症例217、293参照)を合わせて一ヶ月分処方したところ、8月25日に再診で来られ、「のどのつまりがまだ少し残っていますが、首の違和感は消えました。」と明るい表情でいわれました。
このまま同じ処方を続けていく予定です。

普通、喉がつかえや詰まりは、症例102,103で述べたように半夏厚朴湯を使いますが、今回は半夏厚朴湯は無効とわかっていましたので、症例217と同様に香蘇散を試してみました。

咽喉頭異常感症については症例64、65、146、217を参照ください。

 

302.咳の漢方治療

次の症例は84歳、女性です。
平成24年1月より、当院で高血圧症、高コレステロール血症などで通院中の患者さんです。
身長144cm、体重56kg、BMI27.0と肥満を認めます。
平成24年2月に受診された時に、「他院で処方されていたマグミット錠(腸内に水分を引き寄せ、便を軟化増大させ、その刺激で腸の運動が活発になり便通がつく)を飲んでも、便が出にくい。出る時はコロコロした乾燥した便です。」といわれましたので、麻子仁丸(ましにんがん;症例77、116参照)を寝る前に1包処方しました。
1ヶ月後来られた時には、「まだ便がすっきり出ない。」といわれましたので、2包飲むようにと指示したところ、以後便通はよくなりました。
その後、6月28日に来られた時に、「1ヶ月ぐらい前より、夜間に咳が出るようになり、止まりません。」といわれました。
舌が紅く、口の渇きがあり、皮膚乾燥し黒味がかっているなどの特徴から滋陰降火湯(じいんこうかとう;症例128参照)を2週間分処方したところ、7月27日に来られた時に、「おかげさまですぐに咳は止まりました。」といわれました。


滋陰降火湯について

滋陰降火湯は「万病回春」を原典とし、処方内容は、当帰、芍薬、地黄、天門冬、麦門冬、陳皮、蒼朮、知母、黄柏、甘草からなり、血虚に使う四物湯が基本になっています。
「陰を滋(うるお)し、火を降ろす」、この場合の「陰」とは生体内の水分をいい、「火」とは虚火(陰の消耗によって相対的に陽が亢進して発生する熱)をいいます。
つまり方名は、「陰の不足を滋養して、虚火を降ろす」、という意味になります。

虚火により、口の中が非常に乾き、頭がのぼせ、顔がほてります。肺も乾き、痰が切れず、こびりついて空咳が出、おなかも乾き便秘となります。
これまで慢性気管支炎(長年たばこを吸った人が年をとって出てくるタイプの慢性気管支炎)や肺結核に頻用されてきた方剤です。
麦門冬、天門冬で、足りない陰を補い(滋陰)、黄柏・知母の組み合わせにより火を降ろします(降火=清熱)。地黄・知母には滋陰潤燥の働きがあり、養陰剤としての側面を持ちます。

効能効果は「咽に潤いがなく、痰が出なくて咳き込むもの」となっており、また「咳は間欠的で、夜間悪化傾向があり、布団に入ってからだが温まると咳き込むという特徴がある」とされます。

特徴をまとめると、

  • 乾性の咳(痰なし)。
  • 夜、体が温まると咳がでる。
  • 全身の乾燥感は麦門冬湯より強い。
  • 舌紅、咽喉乾燥(のどの奥をのぞくと乾燥してテラテラしている)、口乾あり。
  • 皮膚乾燥し黒味がかっている。
  • 胃腸障害が生じた場合は中止(地黄含有)。
  • 高齢者に使うことが多い。

 

303.腰から左下腿にかけての痛み(腰椎椎間板ヘルニア)の漢方治療

次の症例は76歳、女性です。
平成13年7月より、当院で高血圧症などで通院中の患者さんです。
平成24年5月頃より、腰から左下腿にかけて重だるい感じで、痛みもあるため整形外科を受診、MRI検査で二ヶ所、椎間板の突出を指摘されたそうです。
メチコバール(ビタミンB12製剤;しびれ、痛み、筋力の低下などの末梢神経障害を改善する)、ユベラN(ニコチン酸とビタミンEの合剤;末梢の血管を広げて血流をよくし、血行障害による手足の冷えやしびれを改善する)、湿布薬が処方されましたが全く痛みは改善されなかったため、平成24年7月30日に受診された時に相談を受けました。
足が冷えて、むくむそうです。痛みは天気と関係し、天気が悪いとよけいに痛むそうです。
下腿に細絡(皮膚上に表れる糸ミミズ状で赤紫色の毛細血管腫;症例91参照)を認めました。
身長148cm、体重47kg、BMI21.4。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、白苔を認めました。
薏苡仁湯(よくいにんとう;症例40、111、281参照)と体を温める附子(ブシ;症例2参照)を合わせて2週間分処方したところ、8月10日に来られ、「足のむくみがとれ、痛みもかなり軽くなりました。」といわれましたのでさらに2週間分処方したところ、8月27日に来られ、「痛みは完全にとれました。」と大変喜んでいただきました。

症例281の下田先生の薏苡仁湯のコメントをもう一度見ると、

薏苡仁は水に働き、いつも言うように血にも働いていると思います。血に働くと言うのは私だけなのです。だから一応括弧でくくります。
生薬図鑑にも一切、血に働くと書いていないからあまり言えないのです。でも効き目を見ているとやはり血に働くと思っています。表向きは水ですね。
麻黄は水に働き温めます。朮は水に働き、当帰は血に働き温めます。芍薬は血に働き、桂枝は水と気に働き温めます。甘草も温めます。附子は大熱と言って大いに温め痛みを止めます。
こう見てくると薏苡仁湯加附子は慢性炎症の炎症、痛み、冷え、血、水の治療の全部を満たすのです。

とあります。
本症例は、問診から明らかに水毒(症例196参照)だと考えられます。
また、下腿に細絡があり、一部血の異常もありそうなので、薏苡仁湯がぴったりだと考え処方しました。

304.小児の頭痛の漢方治療

次の症例は12歳、男性です。
幼稚園の頃から吐き気・嘔吐を伴う頭痛があったそうです。
父も頭痛持ちで、バファリンを常用されているそうです。
小学校に入ってからは少し回数が減っていたそうですが、中学校に入ってからまた回数が増えてきた(特に行事の後に出やすい)ため、平成24年5月25日漢方治療を求めたつの市から来院されました。
身長151cm、体重49kg、BMI21.5。
前兆として目の前にチカチカと光が見えたりするそうです。
また、嘔吐して、眠ると頭痛は治りますが、またすぐに痛み出すそうです。
他の症状として、口内炎ができやすい・肩こりなどがあります。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、腹は異常を認めませんでした。
中脘(ちゅうかん、症例186参照)や左天枢(てんすう;症例155参照)の圧痛は認めませんでしたが、小児の習慣性頭痛によく使う柴胡桂枝湯(さいこけいしとう;症例39、66、155、152、186参照)と片頭痛の特効薬の呉茱萸湯(ごしゅゆとう;症例51、169、199、213、261、288、293、388、400、450、505参照)を合わせて処方いたしました。
8月28日に来られた時には、「薬を飲んでいるときには一度も頭痛は起こりませんでしたが、薬がなくなるとまた痛むので薬を取りに来ました。」といわれました。

305.蕁麻疹の漢方治療

次の症例は31歳、女性です。
子供の頃にも蕁麻疹がよく出て、その時は母親が漢方の病院を探してくれて、いったん治癒したそうです。
約1年前より再び蕁麻疹が出るようになり、皮膚科を受診したところ、ザイザルという抗アレルギー薬を処方してもらいそれを飲むとおさまるが、やめるとまた出るため、平成24年8月2日漢方治療を求め太子町から来院されました。
身長158cm、体重47kg、BMI18.8とやせを認めます。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また、両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
むくみ(水毒)体質による蕁麻疹(症例9参照)と判断し、茵蔯五苓散(いんちんごれいさん;症例9、13、120参照)を2週間分処方しましたが、8月16日に来られ、「ザイザルを2日に1度くらい飲まないと蕁麻疹が出ます。」といわれましたので、無効と判断し、次に消風散(しょうふうさん;症例16、220参照)十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう);症例107、165、306参照)に変えたところ、8月28日に来られた時には、「全く出なくなりました。ザイザルも飲まなくて大丈夫です。」といわれました。

じんま疹については、症例9、107、120、153、220も参照してください。

306.にきびの漢方治療

次の症例は23歳、女性です。
にきび(にきびは中学校のころからあるそうです)の漢方治療を求め、平成24年6月9日当院へ来院されました。
てっぺんに黄色い膿(うみ)が見えるタイプのにきびが頬や鼻を中心に多発しておりました。
便秘は認めません。
身長160cm、体重55kg、BMI21.5。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、舌の裏側の静脈枝分かれしていました。
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう);症例107、165、305参照)を一ヶ月分処方したところ、7月6日に来られ、「ましになってきています。効いています。」といわれました。さらに、8月3日に来られた時には、「大きなにきびが少なくなり、小さいにきびが少しだけになりました。」といわれました。確かによく見ないとわからないほどになっていました。
次にお母さんだけが薬をとりに来られ、「鼻のてっぺんに1個だけ小さいにきびがあるだけになっています。それと私から見ても肌全体ががとてもきれいになってきています。」といわれました。

なお、にきびについては、症例6、67、163、182、320、336、337、392もご参照ください。

十味敗毒湯はにきび治療に多く用いられます。
十味敗毒湯に含まれる荊芥(けいがい)・甘草(かんぞう)が、アクネ菌に対して抗菌作用を持つといわれています。

にきびの発生は、毛穴にある皮脂腺(脂を出す腺)が男性ホルモンのひとつであるアンドロゲンにより活性化されることが原因の一つとされています。
そしてもうひとつの男性ホルモン=テストステロンにより、毛穴を囲む皮膚がつまりやすくなるとされています。

つまり、
脂の産生増加(アンドロゲン)+毛穴のつまり(テストステロン)+アクネ菌が増加=炎症性にきびとなるわけです。

また最近十味敗毒湯には、「エストロゲン(女性ホルモン)産生作用」があると報告されています。
女性ホルモンであるエストロゲンは男性ホルモンをブロックする方向に働き、にきびの増加・悪化を抑えるとされています。
十味敗毒湯に含まれる桜皮(おうひ;ヤマザクラの樹皮)が、皮下の繊維芽細胞からのエストロゲン産生を誘導し、にきびに対して抑制的に働くとのです。

なお、十味敗毒湯は出典の違いからメーカーにより、桜皮配合と、樸樕(ぼくそく;クヌギの樹皮;症例227参照)配合のものがあり、ニキビに関しては桜皮が配合されている十味敗毒湯の方が有用性が高いと思われます。

十味敗毒湯は、にきび菌(アクネ菌)を抑制し、男性ホルモンブロックすることにより、脂の増加や毛穴のつまりを改善し、にきびを悪化する要因すべてに総合的に働くというわけです。

 

307.かぜによる咳・痰の漢方治療で便秘が改善した症例

次の症例は67歳、女性です。
平成24年8月13日、38.8℃の発熱と鼻水を訴え外来受診されました。咽頭発赤を認めましたので、PA錠(総合感冒薬)、ブルフェン錠(解熱鎮痛剤)、イサロン錠(胃薬)を5日分処方しましたが、8月17日に来られ、「熱は引きましたが、咳と黄色の痰がよく出ます。」といわれましたので、PA錠、ブルフェン錠にコフノール錠(痰と気道粘膜との粘着性を低下させる物質を産生する作用により、痰を排出しやすくする)とアストミン錠(咳をつかさどる中枢に直接作用することにより、咳をおさえる)と抗生剤のクラリスロマイシンを追加しましたが、8月21日に来られ、「やっぱり咳と黄色の痰が一向に改善しません。それとひどい便秘です。」といわれました。
もともと便秘気味(3日に一度くらいで、便秘だなと思って牛乳を飲むと下痢する。)だったそうです。
アストミン錠は、「非麻薬性中枢性鎮咳薬」で、麻薬性ではないので便秘の副作用もないとされていますが、原因はよくわかりません。
治りが悪いので、これは漢方薬を使うしかないと考え、症例81の普通感冒のマニュアル(下記に一部抜粋)に従い、参蘇飲(じんそいん;症例48、81参照)麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう;症例73参照)に抗生剤のクラビットを併用したところ、8月31日に来られ、「おかげさまですっかりよくなりました。今日来たのは、この漢方薬を飲んでいると、とても便通がいいのでずっと続けたいんで、またもらいに来ました。」といわれました。
これらの中には下剤の成分は何も含まれていませんが、漢方では予期しない効果があらわれるのはよくあることです。
しかし、さすがに下剤としてこれらを続けるわけにはいきませんから、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう;症例78参照)を処方させていただきました。

かぜには、漢方薬がよいのはわかっていながら、つい忙しいと西洋薬を処方してしまうのは反省しないといけませんね。

鼻・咽頭の発赤、腫脹により鼻閉、咽痛を訴える者‥参蘇飲+麻杏甘石湯
咳・痰がひどくなり、痰が黄色になる場合‥参蘇飲+麻杏甘石湯(抗生剤併用)

 

308.産後の体調不良の漢方治療

次の症例は38歳、女性です。
平成24年4月25日、名古屋市で第2子を出産。
その後その産科の医師から芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん;症例143、338参照)を一ヶ月分処方され、それを飲んでいるととても体調がよかったのに、切れるとまた体調が悪くなってきたため、平成24年5月26日赤穂市から来院されました。
症状としては、便秘・頭痛・肩こり・体がだるい・疲れやすい・めまい・腰痛・気分が沈む・不眠などがあります。
身長161cm、体重51Kg、BMI19.7とやせを認めます。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、舌先が紅くなっており(舌尖紅潮;症例72、141参照)ました。
「気虚(脾虚)」と自律神経失調が考えられました。
芎帰調血飲をそのまま1ヶ月分処方したところ、6月16日に来られ、「不眠以外の症状はとれました。」といわれましたので、加味帰脾湯(症例45、193、239、291参照;加味帰脾湯の人は、ちょっと五臓の「脾」が衰えていて(脾虚体質)、軽いうつがある人に使います)を追加したところ、7月17日に来られ、「1週間でよく眠れるようになりました。」といわれましたので、また芎帰調血飲だけを1ヶ月分処方させていただきました。

同じような症例を、症例556に載せております。


芎帰調血飲について

産褥期のトラブルは分娩時の出血や体力消耗による「気血両虚」に、子宮内へ悪露が滞るために起こる瘀血を伴っていると考えられます。
芎帰調血飲は、産後ならどんな症状に使ってもよいといわれています。
女性の基本処方である四物湯(しもつとう;症例54参照)を基本にし、さらには気血水の流れを整える生薬が配合されています。
含まれる牡丹皮(ぼたんぴ)、益母草(やくもそう)は子宮内に残った悪露を排出させる作用もあります。
また、抑うつ感、不安感をやわらげ乳汁の分泌を正常化する効果もあります。

 

309.西洋薬ではコントロールできなくなった便秘の漢方治療

次の症例は34歳、女性です。
学生の頃より便秘で、市販の便秘薬にたよっていた。
最近はセンナ茶を毎日飲むことで何とか排便できていましたが、今回妊娠が判明した時、主治医の先生から、「妊娠したらセンナ茶はよくない。」といわれ、西洋薬を処方してもらった。
結局、胞状奇胎という病気と判明し、子宮内容を除去し、現在経過を追っているそうです。
最近は西洋薬の量が増え、現在、マグミット330mg錠を6錠(通常、成人は1日主成分として2gを3回に分けて食前または食後に服用するか、または就寝前に1回服用します)とセンノサイド錠6錠(通常、成人は1回1~2錠を1日1回就寝前に服用しますが、高度の便秘には、1回4錠まで増量されることもあります。主治医の先生は、「私も5錠飲む時があるから大丈夫よ。」といわれたそうです。)でもすっきりでなくなってしまったそうです。
困っていた時に、ホームページで当院を知り、漢方治療を求めて、平成24年7月23日来院されました。
身長156cm、体重47Kg、BMI19.3とやせを認めます。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。
他の症状として、快便感がない・腹がはる・吐き気・みぞおちがつかえる・薬で胃が荒れやすい・頻尿(冬など夜間に4回ほどトイレへ行く)・汗をかきやすい・肩こり・頭痛・食後眠くなる・手足が冷える・眠りが浅い・青あざができやすいなどがあります。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう;症例15、166、267、285参照)に少量(1g)のダイオウ末を合わせて1ヶ月分処方し、もし便が出にくいようなら、手持ちのマグミット錠を足していただくようにしたところ、8月6日に来られ、「マグミット錠を4錠足して、ちょうどよい感じです。またむくみがとれて、顔が小さくなったといわれます。」といわれました。

本症例のように、虚弱な気虚体質の方の便秘は、注意しないとどんどん薬の量が増えていってしまうので怖いです。


胞状奇胎については、こちらをクリック画像の説明health.goo

便秘の西洋医学的分類と漢方治療については、症例78を参照してください。
本症例に関係のある弛緩性便秘を抜粋しておきます。

  • 弛緩性便秘

漢方では「気虚の便秘」といいます。大腸全体の運動・緊張の低下のため、大便が直腸に達するのに時間がかかるために起こる便秘です。そのため大便の水分が吸収されるため、硬い便になる。直腸性便秘を合併していることが多いです。消化管の筋緊張と運動を高める捕中益気湯(ほちゅうえっきとう)・人参湯(にんじんとう)・六君子湯(りっくんしとう)・大建中湯(だいけんちゅうとう)などをベースに服用し、直腸性便秘がある時は麻子仁丸・潤腸湯を一緒に併用します。

西洋の下剤について

一般的に西洋の下剤は、大きく二つに分けられます。
腸を刺激して蠕動を高める刺激性下剤(センノサイド錠など)と、便を軟らかくしてスムーズにするなど物理的に作用する機械的下剤(マグミット錠など)です。
通常、生活習慣の見直しとともに、こうした下剤を作用の穏やかなものを少量から用いつつ、しばしば組み合わせて排便を管理することになります。
しかしながら特に刺激性下剤では習慣性と長期の連用による腸管神経叢の破壊で効きにくくなることがあり、問題となります
この結果、厄介な弛緩性の便秘が悪化することもまれではありません。

マグミット錠は、習慣性も少なく、長く飲み続けても効きめが落ちないとされ、よく漢方薬とも併用されます。



補中益気湯エキス合大黄末が有効であった寝たきり老人の気虚便秘
(中田薫先生)

〔症例〕 80歳、女性
〔現病歴〕 アルツハイマー型認知症、甲状腺機能低下症の患者。ほぼ寝たきりで、介助により車いすに移動する。排便のためにプルゼニド、アローゼン、ラキソベロン等を服薬するが、自力では排便できず、入浴時に摘便している。排便するための腹圧をかけることができない状態である。
大便は軟らかく、直腸内が広く、人差し指と中指だけでは奥まで届かず摘便できなくなり、介護職員は自力で排便できないとあきらめている。
補中益気湯7.5g分3と、ダイオウ末1.0g分1投与後、自力で排便できるようになった。

〔結論〕 排便しようと、いきむ力のない老人には、気虚便秘と考え、補中益気湯(十全大補湯も可)を使う。

 

310.うつ病の補助療法として漢方治療

次の症例は38歳、男性です。
今年になってから調子が悪く、平成24年5月、うつ病と診断され心療内科に通われている患者さんです。
現在飲まれている薬は、ベタマック(胃の粘膜の血流をよくし、胃潰瘍の治りを助けるだけでなく、脳の活動をよくして,気持ちが前向きになるのを助ける働きがあるため、うつ病・うつ状態の治療薬として使われます)、エチセダン(不安や緊張をやわらげる)、サインバルタ(抗うつ薬)、イソクリン(不安、緊張などを和らげる)です。
これらを飲んでも体調はよくならないため、漢方治療に切り替えたいと希望され、平成24年8月7日たつの市から来院されました。
うつ病を漢方単独で治療するのは危険なため、薬はそのまま続けていただき、漢方薬を上乗せすることにいたしました。
身長177cm、体重68Kg、BMI21.7。
一番困る症状は、額や目がとても熱く感じ、頭がずっしり重く、しめつけられるような痛みがあることだそうです(冷やすと少しましになるそうです)。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。
他の症状として、便秘・快便感がない・腹がはる・吐き気・胃がもたれる・胸やけ・のどがつかえる・口内炎ができやすい・食欲不振・頻尿・足や顔がむくむ・汗をかかない・のどや口が渇く・肩こり・鼻づまり・体がだるい・疲れやすい・動悸・食後眠くなる・腰痛・気分が沈む・湿疹ができやすいなどがあります。
腹部触診により、胸脇苦満(きょうきょうくまん)を認めました(胸脇苦満とは、胸から脇(季肋下)にかけて充満した状態があり、押さえると抵抗と圧痛を訴える状態で、柴胡(さいこ)という生薬を含む柴胡剤を用いる重要な目標です)。また腹直筋も張っており、中脘(ちゅうかん)に圧痛を認めました(症例155、186の解説参照)ので、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう;症例39、66、152、155、186参照)に、気虚の薬で、うつ症状にもよい六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301参照)を足して一ヶ月分処方いたしました。
8月31日に来られ、「額や目がとても熱く感じ、頭がずっしり重く、しめつけられるような痛みがあるのはとれました。胃腸もだいぶよくなってきましたが、便秘はまだあります。」といわれました。
9月28日に来られた時には、「便秘ぐらいで、調子の悪い所はありません。今月から仕事に復帰できました。」といわれました。
少量のダイオウ末(1日1g)追加したところ、10月26日に来られた時には、「ダイオウ末1日0.5gで、便がよく出るようになりました。」といわれました。

ずいぶん調子よさそうなので、このまま続けて行く予定です。

うつ病の漢方治療については、症例365も参照してください。

311.左膝と腰の痛みの漢方治療

次の症例は79歳、男性です。
約5ヶ月前より、左膝(こちらの痛みが主)と腰痛が出現したため、市販の痛散湯(再春館製薬所)を3ヶ月服用されましたが全く効かないため、今度は整形外科を受診したところ、セレコックス(消炎・鎮痛剤)、リリカ(症例255参照)、メチコバール(ビタミンB12・末梢性神経障害治療剤)、ガスター(胃薬)、ロキソニンテープ(湿布)が処方されましたが、それも全く無効で改善しないため、当院通院中の方の紹介で、平成24年6月16日来院されました。
身長162cm、体重61Kg、BMI23.2。
他の症状として、頻尿・夜間尿・肩こり・口が渇く・腰痛などがあります。
この方の舌を診ると、紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、「瘀血」(おけつ)体質がはっきりとしておりました。
腹診をしたところ、下腹部が軟弱無力で、圧迫すると腹壁は容易に陥没し、押さえる指が腹壁に入るような状態(小腹不仁(しょうふくふじん))をはっきりと認め、「腎虚」(症例58、128、161、194、216参照)もある(頻尿や腰痛はこのためと思われる)と考えられましたので、八味地黄丸(はちみじおうがん;症例42、216、235参照)疎経活血湯(そけいかっけつとう;症例1参照)と体を温める附子(ブシ;症例2参照)も合わせて一ヶ月分処方いたしました。
なお、この時に、「腎虚は治療するのに時間がかかるので、3ヶ月間ほどは続けてほしい。」と話しておきました。
7月11日に来られた時には、「少しましかな(私に気を使って言われているようで実際は効いていない感じ)。」といわれました。
8月8日に来られた時には、「朝方はましになったが、昼からが少し痛む。」といわれました。
9月6日に来られた時には、「ようやく薬が効いて痛みがなくなった。あと10日ほどで3ヶ月がくるので、やっぱり先生がいわれたとおりだったわ。」といわれました。

変形性膝関節症の漢方治療については症例2,76,111,131,184,207,209,228,245,268,269,282,283,300,319,334,355も参照して下さい。


八味地黄丸について(森田 幸門先生)

1~2ヶ月以上服用しないと、この薬は効果があらわれません。
地黄もたくさん入っており、胸がつかえて初めは食欲がなくなってきます。
少し慣れますと悪くありませんから、気長に続けますと、胸になじんで、いけないということがなくなってきます。

 

312.通年性の鼻炎の漢方治療

次の症例は36歳、男性です。
一年中鼻水、くしゃみ、鼻詰まりががあり、特に春先はひどいそうです。
あまり冷えは感じず、風呂に入った時には鼻水の量が増えるそうです。
漢方治療を求めて、平成24年5月26日姫路市より来院されました。
他の症状として、下痢・薬で胃が荒れやすい・片頭痛・疲れやすい・食後眠くなるなどがあります。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。
身長175cm、体重60kg、BMI19.6とやせを認めました。
麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう;症例49参照)に、気虚の薬の六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、310参照)を足して一ヶ月分処方いたしました。
一ヶ月後の6月30日に来られましたが、少し、鼻水が減ったぐらいであまり効いていないようでした。頭痛はましになったそうです。
「あまり冷えは感じず、風呂に入った時には鼻水の量が増える。」という人には、やはり麻黄附子細辛湯はあまり効かなかったようです。
よく話を聞くと、小さい時には扁桃炎に繰り返しなっていたそうなので、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう;症例6、27参照)に変えたところ、8月4日に来られ、「鼻が通る時間が増えてきました。よく効いています。」といわれました。
さらに一ヶ月後の9月8日には、「鼻は調子いいです。」といわれました。
六君子湯により下痢もなくなり、頭痛も本当に疲れた時に少し出るくらいなったそうです。

313.冷えのぼせと生理不順の漢方治療

次の症例は38歳、女性です。
足が冷えるのに顔はのぼせ、また生理の量が少なく、周期も31日~40日とばらばらで生理痛もひどいため、漢方治療を求めて平成24年5月12日たつの市から来院されました。
他の症状として、便秘や下痢をしやすい・快便感がない・腹がはる・胃がもたれる・足がむくむ・口が渇く・肩こり・疲れやすい・イライラする・腰痛・寝つきが悪いなどがあります。
身長147cm、体重41kg、BMI19.0とやせを認めました。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。また色が紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ枝分かれしており、「瘀血」(おけつ)体質もはっきりとしておりました。
「気虚」体質に使う六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、310参照)加味逍遥散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297参照)を足して一ヶ月分処方しました。
6月16日に来られ、「顔ののぼせはましになりましたが、足は冷え、生理の量も少なく、生理痛もひどかったです。」といわれましたので、加味逍遥散に変えて当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう;症例92,93、170、231、244、250、272参照)を処方したところ、7月14日に来られ、「全体に体調がとてもよくなりました。」といわれましたので、そのまま続けていただいたところ、8月11日に来られ、「会社の冷房が強いので体が冷えます。他は調子いいです。」といわれましたので、体を温める附子(ブシ;症例2参照)も合わせて処方したところ、9月8日に来られ、「附子を朝1回飲むだけでとても冷えがよくなり、他も調子いいです。体力もだいぶ上昇したのがわかります。」と大変喜んでいただきました。


月経(生理)不順については、症例157を参照ください。

314.アトピー性皮膚炎の漢方治療

次の症例は33歳、女性です。
以前よりアトピー性皮膚炎(皮膚が乾燥し、かさかさするタイプ)がありましたが、最近は落ち着いていて、手に湿疹が少しあるぐらい(主婦湿疹;症例263参照)でしたが、6月に入ってから急に悪化し(原因はよくわからないとのことですが、ストレスは多いそうです)、体だけでなく、顔にまででるようになったそうです。
皮膚科で、抗アレルギー薬の内服と、ステロイドとワセリンを混ぜた軟膏が処方されましたが改善しないため、平成24年6月26日、姫路市から来院されました。
皮膚科のアレルギー検査では、スギ、ヒノキは陽性(春に花粉症あり)でしたが、ハウスダストやダニ類は陰性でした。
身長150cm、体重43kg、BMI19.1とやせを認めました。
他の症状として、口内炎ができやすい・肩こり・イライラする・立ちくらみ・手足の冷え・腰痛などがあります。
この方の舌を見ると、舌先が紅くなっていました(舌尖紅潮;症例72、141参照)。
症例263にある、加味逍遥散(かみしょうようさん);症例72参照)と、乾燥・亀裂など「血虚」(けつきょ)の病変に使う四物湯(しもつとう;症例54参照)を合わせて一ヶ月分処方いたしました。
しかし、7月26日に来られ、「全く効きませんでした。痒みも強いです。」といわれましたので、加味逍遥散に変えて、消風散(しょうふうさん;症例16、220参照)を使ったところ、8月9日に来られ、「前よりだいぶいいです。しかし、日によって顔に病変がでます。」といわれましたので、今度は消風散はそのままにして、四物湯を梔子柏皮湯(ししはくひとう;症例127、276、314、443、588、686参照)に変えたところ、9月10日に来られ、「今度の薬を飲み始めてから2週間で、皮膚がツルツルになり、きれいに治りました。しかし、薬が切れて3日ほどするとまた病変がでてきました。」といわれましたので、今度は切らさないようにお願いし、同じ処方を出させていただきました。

315.主婦湿疹(男性例)の漢方治療

次の症例は37歳、男性です。
約5年前より両方の手指に痒みを伴う皮疹出現。年中皮疹は見られますが、特に夏場にジュクジュクして悪化するそうです。
皮膚科では主婦湿疹(;症例263参照)といわれたそうですが、先生も、「男性で、特に水仕事をしてるわけでもないのにおかしいなぁ。」といわれたそうです。
ステロイドの塗り薬が出されたそうですが、全く改善しないため、平成24年7月25日漢方治療を求めたつの市から来院されました。
身長166cm、体重52kg、BMI18.9とやせを認めました。
夏に悪化する皮疹なので、消風散(しょうふうさん;症例16、220、314参照)を2週間分処方したところ、8月10日に来られ、5年間続いた皮疹が、あっけなくほとんどきれいに治っていました。

昔から夏に増悪する、ジュクジュクして、発赤したり、かさぶたをつくったりしてかゆみの強い皮疹には、消風散がよく効くといわれており、全くそのとおりの症例でした。

主婦湿疹については、症例263、352、550も参照下さい。

316.腰部脊柱管狭窄症の漢方治療

次の症例は61歳、男性です。
仕事が草刈りの方です。
急斜面の草刈りをしてから、両膝から下がしびれ、力が入りにくく、踏ん張れなくなったため整形外科を受診したところ、左変形性膝関節症と左根性坐骨神経痛と診断され、ロキソニン(解熱鎮痛消炎剤)が処方されました。
膝の痛みは少しましになりましたが、その他は不変のため、MRIの検査を受けたところ、かなりひどい腰部脊柱管狭窄症と診断され手術を勧められたそうです。
とりあえずオパルモン(プロスタグランジン製剤)と湿布のロキソニンテープが処方されましたが症状は改善しないため、平成24年5月21日漢方治療を求めたつの市から来院されました。
身長169cm、体重89kg、BMI31.2と肥満を認めました。
この方の舌をみると、白苔を認めました。
腹診では、下腹部が軟弱無力で、圧迫すると腹壁は容易に陥没し、押さえる指が腹壁に入るような状態(小腹不仁(しょうふくふじん))をはっきりと認め、「腎虚」(症例58参照)体質と診断いたしました。
腎虚に使う牛車腎気丸(ごしゃじんきがん;症例47、222,223、252、253参照)疎経活血湯(そけいかっけつとう;症例1参照)を合わせて一ヶ月分処方しました。
6月15日には、「しびれが足首から先だけになりました。歩き始めにお尻のあたりが痛みます。」といわれました。
7月13日には、「坐骨神経痛はとれました。膝から下に血流が下がる感じ(患者さんの弁)があります。朝方が調子悪いです。」といわれました。
8月10日には、「しびれは朝起きた時に足の指先だけ感じます。腰は時々痛みますが、仕事は支障なくできています。」といわれました。
9月14日には、「急斜面の草刈りも問題なくできています。」といわれました。
驚いたことには、「そろそろゴルフを再開してもいいでしょうか。」といわれたことです。それぐらい調子がよくなったと考え、こちらもうれしくなりました。
「草刈りは、電気草芝刈機を左右にふるでしょ。あれってゴルフのスイングの動きに似てるんです。」といわれました。
手術を勧められていた人が、短期間でゴルフができるようになるなんて夢のようですね。

脊柱管狭窄症については症例68、162、233、281も参照下さい。

317.頭痛、動悸、めまい、不安感の漢方治療

次の症例は34歳、女性です。
平成23年に、頭痛・動悸から始まり、めまい・ふらつきを起こし、いつまた発作を起こすかとすごく不安なため、平成24年7月3日漢方治療を求め赤穂市から来院されました。
市販の薬局で加味逍遥散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297参照)香蘇散(こうそさん;症例217、293、301参照)を処方してもらいましたが、無効だったそうです。
身長159cm、体重51kg、BMI20.2。
他の症状として、下痢しやすい・腹がはる・腹が鳴る・のどがつかえる・汗をかきやすい・口が渇く・頭痛・体がだるい・疲れやすい・食後眠くなる・イライラする・耳鳴り・手足がほてる・生理痛がひどく、生理の量が多い・気分が沈むなどがあります。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、白苔と歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。また色が紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ枝分かれしており、「瘀血」(おけつ)体質もはっきりとしておりました。
六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301参照)と加味逍遥散を合わせて一ヶ月分処方しました。
7月28日には、「頭痛、生理痛は少しよくなりましたが、動悸や不安感は改善されません。」といわれました。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう;症例15、166、267、285、309参照)甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう;症例168参照)に変えてみましたが8月10日に来られ、「全く変化なし。」
以前生理痛に桂枝茯苓丸がよかったという言葉をヒントに、桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん;症例67参照)とめまいによく使う、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう;症例20参照)を合わせて2週間分処しましたが、8月22日に来られ、「動悸、不安感が強く、お腹は空くが、のどが詰まって食べ物が飲み込みにくい、物音に敏感などの症状があります」といわれました。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう;症例86参照)と、「市販の香蘇散は合っていたように思う。」といわれましたので、それらを合わせて2週間分処しましたが、9月4日に来られ、「頭が重く、動悸がして、フラフラし、上半身がのぼせる。」といわれました。
どう治療したらよいか困っていたところ、「当院のホームページの”帯帽感(頭帽感;症例195、239、291参照)”が私にぴったりの症状です。」といわれましたので、加味帰脾湯(症例45、193、239、291、308参照;加味帰脾湯の人は、ちょっと五臓の「脾」が衰えていて(脾虚体質)、軽いうつがある人に使います)と香蘇散を合わせて2週間分処したところ、9月18日に来られ、「今までより全然良い感じです。便の状態も良いし、食べ物もおいしいです。」といわれました。やっとぴったりの薬がみつかりよかったです。
それにしてもホームページもお役に立てたのがうれしかったです。

318.車を運転するのが不安の漢方治療

次の症例は43歳、女性です。
元々心配性だそうです。
新しい道を通ったりすると、とても緊張してドキドキし、とても不安になるそうです。また、まわりの景色がサーと動くのをみると車酔いするそうです。
知人の紹介で、平成23年8月30日漢方治療を求め赤穂郡から来院されました。
身長164cm、体重52kg、BMI19.3とやせを認めました。
他の症状として、下痢しやすい・胃がもたれる・首から上だけ汗をかきやすい・頭痛・体がだるい・疲れやすい・イライラする・のぼせやすい・動悸がする・立ちくらみ・夜中に目が覚める・生理が早く来る・生理の量が多い・気分が沈むなどがあります。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、白苔と歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。また色が紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ枝分かれしており、「瘀血」(おけつ)体質もはっきりとしておりました。
六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301参照)加味逍遥散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297参照)を合わせて一ヶ月分処方しました。
9月7日にすぐ来られ、「薬を飲みだして、5日間、頭痛・下痢で、胃も調子悪かったが、今はよくなっています。」といわれました。
9月29日に来られた時には、「回転寿司に行っても、見ているだけでも酔ってしまうんです。下痢はずいぶんましですが、少しまだあります。」といわれましたので、六君子湯を啓脾湯(けいひとう;症例240参照)に変えたところ、10月28日に来られ、「効きすぎて便秘気味です。やはりまだ車に乗るのは不安ですが、他の症状はすべてとれています。」といわれましたので、啓脾湯を1日2回から1回へ減らし、加味逍遥散を桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう;症例224参照)へ変えてみたところ、11月21日に来られ、「やっぱり加味逍遥散の方が調子よかったです。」といわれましたので、加味逍遥散1日2回から3回へ増やしましたところ、平成24年1月4日に来られ、「私は、視力が1.2と1.5なので、良すぎて酔うのかしら。」といわれました。そのまま続けていただき、2月16日に来られた時には、「とても調子よくなったので、加味逍遥散を1日1回にしたら、やっぱりだめでした。」といわれましたので、3回で飲んで頂くようにしたところ、3月30日に来られ、「車の運転もしています。まだいまだに気は進みませんが‥。」といわれました。
そのまま続けられて、9月21日に来られた時には、「調子いいです。8月末にとても調子良かったので、4日間薬をやめたら悪化し出したので、あわててまた飲み始めました。」といわれました。

同じような症例を、症例399、543、572に載せております。

319.変形性膝関節症の漢方治療

次の症例は、症例282の方です。
7月21日に来られた時にも、「調子いいです。」といわれていましたが、8月25日に来られた時、「一時治っていたのが、また痛くなってきました。」といわれました。
よく話を聞くと、足を鍛えるために、プールで歩いていたそうです。「足が冷えて冷たいです。」といわれましたので、症例184の首藤孝夫先生の変形性膝関節症の漢方治療マニュアルの、
局所が冷えて改善しない場合‥防已黄耆湯+桂枝加朮附湯や麻黄附子細辛湯(症例49参照)や五積散(症例36、37、180、183参照)‥の中から、桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう症例23、104、203、206参照)を選び、一ヶ月分処方したところ、9月25日に来られ、「すぐにまた痛みが取れて調子良くなりました。」といわれました。
そして、「もうプールはやめました。」といわれました。
やっぱり、神経痛や関節痛は冷やしたらだめなんですね。

変形性膝関節症の漢方治療については症例2,76,111,131,184,207,209,228,245,268,269,282,283,300,311,334,355も参照して下さい。

320.にきびの漢方治療

次の症例は37歳、男性です。
約30年前より、鼻がよく詰まり、扁桃腺もよく腫らしていたそうです。
20年前より顔全体ににきびが出るようになったそうです。
漢方薬局で、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう;症例6、27参照)を出してもらい、それがよく効いたそうですが、お金が高くて続かなかったそうです。
平成24年6月1日漢方治療を求め姫路市から来院されました。
身長164cm、体重64kg、BMI23.8。
この方の舌を見ると、辺縁が分厚く赤く(この赤みは肝の熱を表しています)、中央に白の苔を認め、「気滞」と考えられました。
病歴からも荊芥連翹湯はぴったりと考えられましたので一ヶ月分処方したところ、6月14日に来られ、「にきびが枯れてきて調子よい。」と、喜んでいただきました。
7月21日に来られた時には、「少しまた出だしました。毎年夏は悪化しやすいです。」といわれましたので、1日2回から3回へ増やしたところ、8月18日に来られ、「にきびが枯れてきて調子よくなりました。」といわれました。
また、「クーラーにあたると、鼻炎症状が出ます。」といわれましたので、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう;症例49参照)を頓服で飲むようにしていただいたところ、9月15日に来られ、「鼻炎はすぐよくなり、にきびも調子いいです。」といわれました。

なお、にきびについては、症例6、67、163、182、306、336、337、392もご参照ください。

荊芥連翹湯は、鼻炎を伴うものによく用い、にきびは小さめで、散発する傾向の者に合うといわれています。
痛みが強い、膿が黄色っぽい、赤みが強いなどの特徴があります。
荊芥連翹湯には、補血の基本剤「四物湯(当帰、芍薬、川芎、地黄)」が配合されており、熱をさます、黄連解毒湯(黄連、黄柏、黄芩、山梔子)など15種類以上の生薬で構成されているので、体に負担をかけにくいマイルド処方になっています。

 

321.小児の微熱・胃痛・下痢の漢方治療

次の症例は12歳、男児です。
「最近、37℃代後半の微熱が続き、胃が痛み、下痢が続き、食欲がない。」と、平成24年7月14日来院されました。
舌診では特に異常を認めず、 腹診では腹直筋緊張(;症例279参照)を認めました。
小建中湯(しょうけんちゅうとう;症例26、29、145、190、192参照)を2週間分処方しましたが、7月25日に来られ、「漢方薬はまずくて飲めない。胃が痛み、下痢は続いています。微熱も続きます。」といわれましたので、アシノン(胃炎や胃潰瘍の治療薬)と下痢止めのロペミンを14日分処方しましたが、あまり効果がなかったので、また途中から小建中湯を飲み始められたそうです。
8月4日に来られ、「普通に漢方薬が飲めるようになりました。調子もよさそうです。」とお母さんがいわれましたので、また小建中湯を一ヶ月分処方したところ、9月28日に来られ、「微熱もとれ、胃腸もとてもよくなりました。このあと薬は続けた方がよろしいでしょうか。」と聞かれましたので、「体質改善のため、2~3年は続けられた方がよい。」とお話させていただきました。

気虚の発熱(症例15、166、267、285)は、慢性に繰り返す微熱で精神的・肉体的疲労にともなって発生し、通常は補中益気湯(ほちゅうえっきとう)で加療しますが、小建中湯単独でも効果がありそうです。


小建中湯について(相見三郎先生)

小建中湯とは建中つまり胃腸を丈夫にする薬で、胃腸の弱い人にはすべて応用される。
殊に子供などで、とりとめて胃腸病でもないのに腹のしくしく痛むもの、便意を催してトイレに行くが通じがないまま出て来るとまた行きたくなるというようなのには本方をやればてきめんに効く。
そのような子供は虚証の体質で疲れやすい。
大人でも時々腹痛を訴えたりして癌ノイローゼになっているようなのに本方をやると簡単になおってしまう。
老婦人などで頻尿で外出も出来ないようなのに本方をやるとなおる場合が多い。
冷え性で夜も寝つけないという者に本方をやるとポカポカして良く眠れるようになる。
胃下垂は近頃は手術で胃を切除することをすすめられる場合が多いが、そんな場合本方をやるだけでなおってしまうものが多い。
常習性下痢も本方でなおる
胃潰瘍、十二指腸潰瘍で病院で胃切除を指示された者でも大低は本方をやるだけでその必要もなく治ってしまう。
小児喘息は虚弱体質の子どもに多いものであるが、本方の腹証のある小児喘息ならば、本方をやるだけで治る場合が多いもので、麻黄の入った処方はむしろ用いない方がよい。
カゼをひきやすい体質の人には平素から本方を運用しているとカゼをひかないようになる。
黄耆建中湯で肋骨カリエスを手術せずに全治せしめた二例を経験している。

 

322.難治性慢性下痢に半夏瀉心湯と真武湯の合方(断痢湯)が有効だった1例

次の症例は83歳、女性です。
平成24年8月8日より感冒症状があり、途中高熱が出現したため、8月16日に総合病院を受診したところ、肺炎と診断され入院されました。
ロセフィン(抗生剤)2g/ 日の投与で軽快し、9月2日に退院されました。
しかし、入院中より抗生剤の副作用と思われる水様性の下痢が、1日に5~6回見られましたが、そのまま退院させられたそうです。
ビオスリー(止瀉・整腸剤)やムコスタ(胃薬)を処方されていましたが、全く効果がなかったそうです。
平成24年9月5日漢方治療を求め来院されました。
身長138cm,体重35.0kg(今回の病気で3kg減少)、BMI18.4とやせを認めます。
食欲もあまりないそうです(この2つの症状から脾虚;症例97参照が疑われます)。下痢後の裏急後重(りきゅうこうじゅう;下痢で、排便後またすぐに便意をもよおす状態。渋り腹)はないそうです。また腹鳴や、腹痛もないそうです。
人参湯(にんじんとう;症例8参照)に、体を温めるブシ末を併用して2週間分処方しましたたが、9月12日に来られ、「全く下痢が止まりません。もう3週間も下痢が続いています。」といわれましたので、半夏瀉心湯;症例17、163、176、179、188、218、286、292参照と、真武湯;症例104参照を合方して1日に3回断痢湯(だんりとう)の方意で2週間分処方しました。
9月29日に来られ、「5日ほど前にようやく下痢が止まりました。」といわれました。

同じような症例を症例415に載せております。


断痢湯について(矢数道明先生)

断痢湯は『外台秘要方(げだいひようほう)』が出典で,脾の冷えからくる下痢によいとされている。
『勿誤薬室方函口訣(ふつごやくしつほうかんくけつ)』では「この方は半夏瀉心湯の変方」としている。

断痢湯は、①心下に水飲があり胃内停水がある、②長引いて陰証となり下痢が止まらない、③さまざまな薬を用いても効かない下痢などに用いてよいとされています。

【文献】矢数道明.慢性下痢(潰瘍性大腸炎)に胃風湯と断痢湯。漢方治験精選集上巻、医道の日本社、2004、p.172

 

323.掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)の漢方治療

次の症例は61歳、女性です。
約5年前より、皮膚科で手や足の掌蹠膿疱症と診断され、ステロイド軟膏と、かゆみ止めに抗アレルギー薬を処方されましたが全く無効のため、平成24年7月6日漢方治療を求め来院されました。
手より足の方がひどく、夏場に悪化しやすいそうです。
身長152cm、体重55kg、BMI23.8。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれしており、瘀血(おけつ)体質と診断いたしました。
そこで瘀血(おけつ)体質によく使う、桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん;症例67参照)と、桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう;症例121参照と軟膏の紫雲膏(しうんこう;症例54参照)を合わせて一ヶ月分処方いたしました。
8月4日来られたときには、あまり変わりはありませんでしたので、桂枝茯苓丸加薏苡仁を十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう);症例107、165、305、306参照)に変えてさらに一ヶ月分処方いたしました。
8月31日来られたときには、「手は完全に治りました。足もましになっています。赤みがずいぶん引いて、かゆみもありません。」といわれました。さらに一ヶ月分処方したところ、9月29日来られたときには、足も3~4個にきび様の隆起が見られるだけでほぼ治っておりました。


掌蹠膿疱症については、症例33、121も参照ください。

324.高血圧症の随伴症状の漢方治療(2)

次の症例は68歳、女性です。
他院で、ノルバスク5mgの投与を受けていますが、血圧は高め(収縮期血圧で150~160mmHgくらい)で、肩甲骨のあたりから何かが突き上げてくるような感じでファーとして、しまいにはフラフラしたり、頭がボーとしたりする感じがずっと続いています。メニエトール(内耳微小循環や血管透過性を調整し、脳血流量を増加し、前庭器官や中枢神経に作用して、回転性のめまいを和らげる)、カルナクリン(血液の流れをよくし、循環障害を改善する。高血圧症、メニエール症候群などに使用する)も投与されていますが全く効いていないようです。
平成24年7月4日漢方治療を求め来院されました。
身長151cm、体重65kg、BMI28.5と肥満を認めました。
この方の舌を見ると、薄い白苔を認め、色が紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ枝分かれしており、「瘀血」(おけつ)体質を認めました。
釣藤散(ちょうとうさん;症例60、132、274参照)を一ヶ月分処方いたしました。
8月1日来られたときには、「頭がボーとしたりする感じがとれました。家で測る血圧もよく下がっています。」といわれました。
8月23日来られたときには、「とても調子がいいです。肩甲骨のあたりから何かが突き上げてくるような感じも消えました。」といわれました。
9月6日来られたときの血圧は、126/76mmHg、10月1日来られたときの血圧は、132/72mmHgでした。患者さんはとても漢方を気に入られ、ずっと続けたいといわれました。


同じような症例を、症例132に載せています。

高血圧症の随伴症状については、こちらをクリック画像の説明kampo view

 

325.防已黄耆湯を使う便秘の症例

次の症例は41歳、女性です。
体重が2、3年で45kgから63kgと増え、また全身がむくむため、平成24年8月29日、漢方治療を求めたつの市から来院されました。
また、非常に頑固な便秘があり、放っておくと1週間以上出ません。ただし特徴的なのは何日も出なくても本人は苦痛ではないそうです。「でも出ないと体に悪いのではないか。」と思い、無理やり市販のコーラックを飲むそうです。
すると、キリキリとお腹が痛んで(痛みは強く冷や汗が出るほどだそうです)、排便するそうです。
身長153cm、体重63kg、BMI26.9と肥満を認めます。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。
他の症状として、快便感がない・胸やけ・口内炎ができやすい・肩こり・手足が冷えるなどがあります。
典型的な防已黄耆湯(ぼういおうぎとう;症例76、91、104参照)証でしたので、ダイオウ末1g/ 日(下記のコメントにあるように防已黄耆湯を2~3倍量を出せば、ダイオウ末は必要ないと考えられますが、最近は保険審査もきびしくやむを得ず合わせました)と茯苓飲(ぶくりょういん;症例50、264参照)を合わせて一ヶ月分処方いたしました。
茯苓飲は、防已黄耆湯を肥満の治療として用いる時には、併用するとやせる効果がパワーアップすると、織部和宏先生が講演でいわれていましたので使用しました。
10月1日に来られたときには、「体重はあまり変わりませんが、体のむくみが引いて、便が毎日すっきり出ます。お腹もキリキリと痛まず、本当にありがたいです。」といわれました。
その後、11月5日に来られた時には、「薬が切れると、また便秘になりました。体重は変わりませんが、胃酸があがって胸やけするのがなくなりました。」といわれました。


症例104にも書きましたが、もう一度記載します。
真武湯や防已黄耆湯を使う便秘 (下田 憲先生講義より)

真武湯(しんぶとう)には通じ薬は何も入っていません。
真武湯の便秘というのは便が硬いのではありません。便が出るとしたら軟らかいのですが真武湯の便秘は浣腸しても出ません。浣腸して出る様な老人の便秘だったら、麻子仁丸や潤腸湯の便秘です。腹を触ると腸管の中に水やガスでなくワセリンかグリースが詰まっていて、それをつかむような感じ、そういう感じで腹は冷たい(本人の訴えでも寒いという)。
これは何かと言えば潜在性の心不全なのです。消化管が浮腫状になって便秘になるのです。浮腫状ですからそこを下剤で無理に動かすと、その刺激で腸管からの水分が出てくるのです。問診で「出る時はウサギの糞みたいでコロコロですか?」と聞くと「いや、出る時は軟いです。下剤をかけたら本当に軟らかい便しか出ないのです。それでもすっきり出ないのです。」と言う場合はほとんど真武湯です。常用量の半分で効く人もいますが、2倍量出さないと効かない人もいます。

この真武湯が効く便秘と全く同じ状態が、ご婦人(特に若い女性)でもあります。
非常に頑固な便秘があり、放っておくと何日でも出ません。ただし特徴的なのは何日も出なくても本人は苦痛ではないのです。でも出ないと体に悪いのではないか、あるいは肌に悪いのではないかと思い無理やり下剤を飲みます。それも並みの量ではないのです。例えばコーラックなら一瓶買ってきて一週間に一度その全部を飲んだりしますが、すっきりしないけれど絞り出すように便がでるという状態です。
非常に頑固な便秘をして水ぶとりであることは真武湯と全く同じ状態です。腸管が浮腫状になって細くなっているから通じがつかないのです。この場合は防已黄耆湯で見事に改善します。ただし常用量では効きません。2~3倍量が必要になります。

 

326.歯ぎしりの漢方治療

次の症例は38歳、女性です。
10代より歯ぎしりがあり、歯科に通院され、マウスピースも作られましたがうまくいかなかったそうです。
その他にも実に多彩な症状があり、不眠(寝つきが悪くいやな夢を見る)、夜中に目が覚める・下痢・胃がもたれる・胸やけ・吐き気・薬で胃が荒れやすい・むくみ・食欲不振・汗をかきやすい(寝汗)・頭痛・肩こり・にきび・体がだるい・疲れやすい・食後眠くなる・イライラする・耳鳴り・めまい・立ちくらみ・気分が沈むなどがあります。
また、子宮筋腫(直径3cm)があり、生理の量が多く、生理痛も強く、だらだらと2週間ほど生理が続くそうです。
平成23年9月21日、漢方治療を求めたつの市から来院されました。
身長163cm、体重50kg、BMI18.8とやせを認めました。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれしており、瘀血(おけつ)体質と診断いたしました。
抑肝散(よくかんさん;症例24、25、278参照)加味逍遥散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、318参照)を合わせて一ヶ月分処方しました。
10月19日来られたときには、「よく寝れるようになり、動悸もしません。朝起きた時のあごの疲れが和らいでいることから、歯ぎしりもましではないかと思います。」といわれましたので、もう一ヶ月分処方し、いったん治療を終えました。
しかし、平成24年5月14日にまた来院され、「薬が切れると、また寝れなくなり、寝汗がでたり、胸が痛んだりで調子悪いです。」といわれましたので、また同じ処方を出させていただきました。
6月11日には、「寝汗がでなくなりました。まだ寝られない日が時々あります。」といわれました。
7月9日には、「夜がよく寝れるようになり、胃腸もとても調子いいです。」といわれました。
8月18日には、「体調がとてもいいです。生理も順調です。歯ぎしりの強い時は、朝起きたら顎がだるくなっていましたが今はありません。」といわれました。
10月1日には、「薬が少し切れたら、また生理が不順になり、生理前にいろいろ体調不良となりました。」といわれましたので、薬を切らさないよう指導させていただきました。


歯ぎしりについて

歯ぎしりは精神的なストレスが原因で引き起こされる習癖であり、ある疫学調査によれば96%の人に認められると報告されています。
この歯ぎしりは、口腔内では歯痛・歯周病・舌痛症・顎関節症などを引き起こします。
さらに、全身的にも様々な影響を及ぼし、以下のような症状を発生させると考えられています。

  • 頭痛や顔面痛
  • 肩や首の痛みとこり
  • 背中の痛みや腰痛
  • 咽頭や食道の違和感
  • 嚥下困難
  • 胃の不快感や脹満感
  • めまい
  • 耳鳴り
  • 不眠

本症例にも結構当てはまりますね。

 

327.下痢型過敏性腸症候群の漢方治療

次の症例は39歳、女性です。
平成22年より、下痢型過敏性腸症候群(月に10回程度、食事の途中や後が多いそうですが、食事に関係ない時でも突然下痢がはじまるそうです。トイレの心配をするので外出することが怖くなったそうです)と近医で診断されロペミン(強い下痢止め)やイリボー(遠心性神経のセロトニン5-HT3受容体に拮抗することによって下痢を改善し、求心性神経のセロトニン5-HT3受容体に拮抗することによって腹痛を改善します。ただし、処方は男性に限ります。女性においては効果不十分なうえ、男性よりも副作用が出やすいことが確認されているため)を投与されましたが、効いたり、効かなかったりだったそうです。
平成24年4月4日、漢方治療を求めたつの市から来院されました。
身長150cm、体重46kg、BMI20.4(この2年間で体重が15kg減少したそうです)。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれしており、瘀血(おけつ)体質と診断いたしました。
腹診では腹直筋緊張(;症例279参照)を認めました。
他の症状として、ガスが多い・腹がはる・腹が鳴る・腹痛・食欲不振・汗をかかない・頭痛・手足が荒れる・疲れやすい・立ちくらみ・のぼせやすい・手足の冷え・腰痛・頻尿・残尿感などがあります。
最初、小建中湯(しょうけんちゅうとう;症例26、29、145、190、192、321参照)加味逍遥散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、318、326参照)を合わせて一ヶ月分処方しました。
5月1日に来院され、「少し、下痢の回数が減りました。しかし、足がよく冷えます。」といわれましたので、体を温める附子(ブシ;症例2参照)を追加しました。
5月28日には、「下痢はなくなりました。しかし、足はまだ冷えて、頻尿が続きます。」といわれましたので、加味逍遥散を苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう;症例41参照)に変えてさらに一ヶ月分処方いたしました。
6月26日に来られたときには、「下痢はいいですが、頻尿が続きます(特に夕方にかけて)。そして、まだ電気毛布がいるんです。」といわれましたので、体を温める附子(ブシ)を0.5g/ 日から1g/ 日に増やしてさらに一ヶ月分処方いたしました。
7月23日来られたときには、「また、腹痛を伴う下痢が5回ほどありました。足の先だけ冷えます。」といわれましたので、小建中湯を桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう;症例41、78参照)に変えて回数も3回/ 日に増やしたところ、8月20日には、「下痢の回数もだいぶ減り、調子よくなってきました。」といわれましたが、もう一歩という感じでしたので、桂枝加芍薬湯をお腹を温める人参湯(にんじんとう;症例8参照 3回/ 日)に変えて処方(苓姜朮甘湯と附子はそのまま)したところ、9月4日には、「人参湯がとても合っています。」といわれました。2週間分とても調子いいです。特に困ることはありません。」といわれました。
結局この方の場合、冷えがかなり悪さをしていたのだと考えられました。

328.補中益気湯エキス合ダイオウ末が有効であった老人の気虚便秘

次の症例は76歳、男性です。
2年前に大腸内視鏡検査で、大腸ポリープを摘出してから、便秘になったそうです。
5~7日ぐらいに1回しか出ず、出るとしたらコロコロ便だそうです。
便が出ないため、一度近くのクリニックに行ったときに看護師さんが、摘便をしてくださったので、これまで薬は飲まずに、自分で摘便してきたそうです。
そんな時、当院へ便秘の漢方治療で通院されている方の紹介で、平成24年9月5日、漢方治療を求め来院されました。
身長160cm、体重47.5kg、BMI18.6とやせを認めました。
他の症状として、体がだるい・疲れやすい・食後眠くなるなど気虚を思わせる症状があります。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。また色が紫がかり、「瘀血」(おけつ)体質もあると考えられました。
腹診では下腹部が軟弱無力で、圧迫すると腹壁は容易に陥没し、押さえる指が腹壁に入るような状態(小腹不仁(しょうふくふじん))をはっきりと認め、腎虚(症例58参照)もあると考えられました。
症例309と同じ、虚弱な気虚体質の方の便秘と考え補中益気湯(ほちゅうえっきとう;症例15、166、267、285参照)7.5gに少量(1g)のダイオウ末を合わせて1日2回に分けて2週間分処方したところ、10月5日にに来られたときには、「最初の1週間は毎日いい便が出ていましたが、途中から軟便になったため薬の服用を1日一回だけにしていました。」といわれましたので、補中益気湯1日1回では気虚の改善が遅れると考え、ダイオウ末の量を半分の0.5g/ 日にして、1日2回飲んでいただくようにしました。

329.頑固な湿疹の漢方治療

次の症例は74歳、女性です。
約半年前より、全身に湿疹が出現し、近くの皮膚科に受診したところ、アレロック(かゆみ止めの抗アレルギー薬)、マイザー軟膏(ステロイド軟膏)、アンテベートローション(ステロイド軟膏)が処方され、約半年間治療を続けられましたが、全く改善しないため、当院で皮膚疾患の漢方治療を受けられた方の紹介で、平成24年5月19日漢方治療を求めたつの市から来院されました。
下記の写真は来院時のもの(赤味が強い湿疹です)。

画像の説明

身長152cm、体重70kg、BMI30.3と肥満を認めます。
他の症状として、やや便秘気味だそうです。とにかく気が狂いそうなほどかゆみが強いそうです。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれしており、瘀血(おけつ)体質と診断いたしました。
消風散(しょうふうさん;症例16、220、314、315参照)十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう);症例107、165、305、306、323参照)に少量(1g)のダイオウ末を合わせて1日2回に分けて2週間分処方したところ、6月1日に来られ、「少しましになっている気がします。便秘も改善しています。」といわれましたので、今度は一ヶ月分処方したところ、7月2日に来られ、「まだ少し出ていますが、だんだんましになっています。」といわれました。
8月2日には、「かゆみが止まりました。湿疹もだいぶよくなっているので、ステロイドの塗り薬もやめています。ちょっと便がゆるくなってきました。」といわれましたので、ダイオウ末を中止にいたしました。
9月3日には、「赤味がひいてかゆみもなく、調子いいです。」といわれました。

画像の説明

10月6日には、「少し、皮膚がカサカサします。かゆみはまったくありません。本当にうそのようです(上記の写真)。」といわれましたので、保湿剤のビーソフテンを追加処方させていただきました。

330.片頭痛の漢方治療

次の症例は39歳、女性です。
以前より、片頭痛(吐き気、嘔吐を伴う)があり、市販のナロンエースを月に20回以上飲まれているそうですが、最近効きが悪くなったと感じておられます。
生理の前後が特にひどいそうです。
平成24年8月4日、漢方治療を求め来院されました。
身長148cm、体重36kg、BMI16.4とやせを認めました。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。また色が紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれしており、「瘀血」(おけつ)体質もあると考えられました。
他の症状として、肩こり・めまいなどがあります。
加味逍遥散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、317、318、326参照)呉茱萸湯(ごしゅゆとう;症例51、169、196、261参照)を合わせて一ヶ月分処方しました。
9月5日には、「頭痛は少しましになりましたが、普段は5~6日で終わる生理が今回は2週間も続き、出血量も多かったです。」といわれましたので、加味逍遥散を当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん;症例14、158、241、249、254、265参照)へかえてみたところ、10月11日には、「「頭痛は生理の前後に少しあるだけになりました。ナロンエースも3~4回飲んだだけです。生理も以前のように戻りました。こちらの薬のほうがよくあっている感じです。」といわれました。

331.足のむくみと片頭痛の漢方治療

次の症例は37歳、女性です。
20歳の頃より、片頭痛(吐き気、嘔吐を伴う。疲れた時に出やすい。)があり、また、下肢、特にふくらはぎが痛いほどむくむため、平成24年9月6日、漢方治療を求め太子町から来院されました。
身長168cm、体重68kg、BMI24.1。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。
他の症状として、体がだるい・疲れやすいなど気虚を思わせる症状と、イライラ・手足の冷え・生理痛がひどい・汗をかきやすいなどがあります。
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう;症例76、91、104参照)呉茱萸湯(ごしゅゆとう;症例51、169、196、261、330参照)を合わせて一ヶ月分処方しました。
9月26日には、「頭痛はほとんど出ず、足のむくみも引いてとても調子いいです。生理痛もなかったです。」と喜んでいただきました。

332.痒疹の漢方治療

次の症例は39歳、女性です。
約10年前より、下腿中心に多発する赤みの強い丘疹があり、皮膚科で痒疹(ようしん)と診断され、ステロイドの軟膏で治療されてきたそうです。
経過はよくなったり、悪くなったりで完全に良くなることはなかったそうです。痒みはとくに風呂上りがひどいそうです。
今回2ヶ月前よりひどくなり、また皮膚科でステロイドの軟膏で治療されたそうですが、改善しないため、市販の漢方薬局で十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう);症例107、165、305、306、323、329参照)を処方され2週間服用したところ、それが結構よかったので、皮膚科の主治医に話したところ、「十味はなぁ‥。」といわれ、代わりに越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう;症例94、109、184、245参照)を処方されたそうです。それを飲んでも全く改善しないため、漢方の専門病院へ行った方がよいと考え、平成24年9月8日、姫路市から当院へ来院されました。
身長167cm、体重52kg、BMI18.6とやせを認めました。
十味敗毒湯と湿疹の基本薬で、痒みを止める力の強い消風散(しょうふうさん;症例16、220、314、315、329参照)を合わせて一ヶ月分処方しました。
10月6日には、「赤みも引いて、痒みもなく調子いいです。」といわれましたので、そのまましばらく続けていく予定です。

痒疹については、症例165も参照下さい。


痒疹について

痒疹については、こちらをクリック画像の説明にしむら皮膚科クリニック
紫外線療法も効くそうです。

 

333.成人の気管支喘息の漢方治療

次の症例は68歳、女性です。
他院内科でクリアナール(痰の主成分を分泌する細胞に作用し、気道粘液と粘膜を正常状態に修復することにより痰の量や気道の炎症を抑え、痰の粘度を低下させて痰を出しやすくする)、キプレス(選択的にロイコトリエン受容体に拮抗し、抗炎症作用、気管支収縮抑制作用を示す。そして、気道過敏性の亢進が抑制され、喘息発作が起こりにくい状態になる)、アドエア(ステロイドの吸入剤)で喘息の治療を受けておられますが、どうしても痰が切れにくいのがつらいと、平成24年7月6日、姫路市から当院へ来院されました。
身長158.3cm、体重56.7kg、BMI22.6。
他の症状として、胃がもたれる・腹がはる・腹痛・肩こり・動悸がする・耳鳴・めまい・頻尿・汗をかきやすい・腰痛・寝つきが悪いなどがあります。
この方の舌を見ると、色が紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれしており、「瘀血」(おけつ)体質もあると考えられました。
腹診をしたところ、下腹部が軟弱無力で、圧迫すると腹壁は容易に陥没し、押さえる指が腹壁に入るような状態(小腹不仁(しょうふくふじん))をはっきりと認め、腎虚(症例58参照)もある(頻尿や腰痛はこのためと思われる)と考えられました。
柴朴湯(さいぼくとう;症例73、217参照)腎咳(症例161、194、238参照)の可能性も考え牛車腎気丸(ごしゃじんきがん;症例47、222、223、252参照)を合わせて一ヶ月分処方しました。
8月13日には、「薬がよく効いて、痰がほとんど出なくなりました。」と大変喜んでいただきました。
その後もずっと続けられており、10月13日にも、「引き続き調子いいです。痰も出ません。」といわれました。
11月13日には、「調子がいいので、吸入薬の量を減らしてもらえました。また腰痛も楽になりました。頻尿は変化ありません。」といわれました。

気管支喘息については、症例73、198も参照下さい。

喘息発作の改善した後も、しつこい咳や痰などが残るときには、体力のある実証の人では、麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)、五虎湯(ごことう)、体力がない虚証や高齢者などでは苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)などが用いられます。
くしゃみ、鼻水、水っぽい痰をともなうときには小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、空咳やのどの乾燥感をともなう咳には麦門冬湯(ばくもんどうとう)、痰がきれない、胸苦しい、のどがふさがる感じがする場合には柴朴湯(さいぼくとう)などが用いられます。
とくに柴朴湯はこれまでもっともよく使われ、吸入ステロイド療法との併用で長期的に用いて気道炎症の改善、発作の予防に有用で第一選択薬となります。

 

334.右の腰痛・膝関節痛の漢方治療

次の症例は82歳、女性です。
約10年前より、右の腰痛・膝関節痛が出現、整形外科でははっきりした病名は告げられませんでしたが、「治らない。」と言われたそうです。
腰は胃の裏辺りが痛み、膝は中心部が痛み、以前は水がよくたまったそうですが、今はたまらないそうです。
また、近所の内科では、気管支喘息・高脂血症・高血圧症で通われています。また、そこで、デパス(不安や緊張感をやわらげ、気持ちを落ち着かせる)が処方されています。
平成24年9月21日、知人の紹介で加西市から当院へ来院されました。
身長160cm、体重62kg、BMI24.2。
他の症状として、便秘・腹がはる・口内炎ができやすい・肩こり・疲れやすい・耳鳴(右)・手足の冷え・夜中に目が覚める・いやな夢をみるなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また、両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
また、色が紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれしており、「瘀血」(おけつ)体質もあると考えられました。
足に静脈瘤も認めました。
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう;症例76、91、104参照)に「瘀血」(おけつ)体質に使う桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん;症例67参照)と体を温める附子(ブシ;症例2参照)も合わせて一ヶ月分処方いたしました。
10月16日には、「腰痛はほとんど治りました。また、右耳のツーンとした耳鳴りもとれました。足も軽くなり、気持ちが本当に軽くなりました。また疲れれにくくなりました。」と大変喜んでいただきました。
このまま同じ処方を続けていく予定です。
ただ、便秘は続くようでしたので、ダイオウ末1g/ 日を併用させていただきました。

変形性膝関節症の漢方治療については症例2,76,111,131,184,207,209,228,245,268,269,282,283,300,311,319,355も参照して下さい。

335.生理が止まらないの漢方治療

次の症例は42歳、女性です。
一ヶ月生理がとんだため、近くの漢方医を受診したところ、温経湯(うんけいとう;症例10、64、248、271参照)を処方され、それを飲んだところ、10日ぐらいで生理が来たそうですが、その後出血が止まらなくなり(出血量も多く、生理痛も強い)、平成24年9月21日、知人の紹介で赤穂市から当院へ来院されました。
身長152cm、体重43kg、BMI18.6とやせを認めました。
他の症状として、腹がはる・腹痛・頭痛・肩こり・手足の冷え・足がむくむ・のぼせやすい・鼻水・ねつきが悪い・ねむりが浅いなどがあります。
この方の舌を見ると、色が紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれしており、「瘀血」(おけつ)体質と考えられました。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん;症例14、158、241、249、254、265、330参照)一ヶ月分と芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう;症例84参照)は2週間分処方いたしました。
10月6日には、「生理もすぐに止まり、体調もとてもいいです。」と喜んでいただきました。

なお、症例248にも記載しましたが、温経湯は、全体に皮膚がかさかさし、さらに唇が乾き、手のひらも乾燥して熱っぽい人に用います。本症例のようにむくみやすい人には不向きで、当帰芍薬散を使用すべきです。


芎帰膠艾湯について

この薬の止血効果は、阿膠(あきょう)と艾葉(がいよう)という生薬に由来します。
阿膠はロバの皮から取れるニカワ、すなわち「コラーゲン」です。コラーゲンは、体の組織と組織をつなぐ“糊”のような働きをする大切な物質です。
皮膚や粘膜以外にも、骨や軟骨、靭帯といった組織に含まれます。
艾葉はヨモギの葉っぱです。
昔から、切り傷にヨモギの葉を揉んで貼り付けておくとよく治ることが知られていますが、これはヨモギの止血効果を利用したものです。
芎帰膠艾湯は、ヨモギで血を止め、阿膠で損傷した組織をくっつけて、また血虚の基本薬である四物湯(しもつとう)が丸ごと配合されていますので失った血を回復させます。
また、阿膠そのものにも、補血の作用があるといわれています。

 

336.にきびの漢方治療

次の症例は27歳、女性です。
様々な症状があり、体調が不良のため、平成23年9月2日漢方治療を求めたつの市から来院されました。
症状は、便秘と下痢の繰り返し・腹が鳴る・口内炎ができやすい・汗をかきやすい・口が渇く・片頭痛・肩こり・腰痛・体がだるい・疲れやすい・イライラ・めまい・立ちくらみ・手足の冷え・不眠(寝つきが悪い)、夜中に目が覚める・生理の量が多い・頻尿・残尿感・排尿痛・夜間尿など多彩です。
身長163cm、体重63kg、BMI23.7。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また、両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
また、色が紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、枝分かれしており、「瘀血」(おけつ)体質もあると考えられました。
加味逍遥散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、317、318、326、330参照)六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318参照)合わせて一ヶ月分処方いたしました。
この組み合わせがよく効いて、体調はよくなられましたが、10月31日に来られた時に、「にきび(てっぺんに黄色い膿(うみ)が見えるタイプが、特に頬やあごのラインに多い)が気になります。」といわれましたので、六君子湯を桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん;症例67参照)に変えたところ、11月28日に来られ、「にきびはあまり変わりありません。」といわれましたので、加味逍遥散を十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう);症例107、165、305、306参照)に変えて、桂枝茯苓丸加薏苡仁といっしょに飲んでいただきましたが、やはり無効で、患者さんは通院をいったんやめられました。

次に平成24年5月1日に来院され、「薬をやめると、やはり体調が悪く、生理も1週間あったものが2日で終わってしまいます。また生理前にすごくイライラします。」といわれましたので、また、加味逍遥散と桂枝茯苓丸加薏苡仁を処方いたしました。
7月2日に来院されましたが、薬がよく効いてイライラもとれ、体調もよくなられたのですが、やはりにきびだけが悩みとして残ってしまいましたので、桂枝茯苓丸加薏苡仁を十味敗毒湯に変えましたが、やはり同じでした。
9月3日に「たまに口のまわりにもできます。」という言葉をヒントに、十味敗毒湯に変えて、症例163にならって半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)(症例17、89、176、179、188、218、286参照)を一ヶ月分処方いたしました。
しかし、10月2日に来院されましたが、やはり無効でしたので、清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)を処方いたしました。
すると、10月19日に来院され、「にきびがきれいになりました。」といわれました。
あれほど難治であったにきびが、わずか2週間ちょっとで、綺麗に治っていましたのでこちらが拍子抜けしたくらいでした。
他の多彩な症状は加味逍遥散でうまくコントロールされていますので、この2つの処方をしばらく続けていく予定です。

なお、にきびについては、症例6、67、163、182、306、320、337、392もご参照ください。


清上防風湯について(下田 憲先生)

これも、際物(きわもの)的な皮膚薬です。
荊芥(けいがい)、防風(ぼうふう)、白芷(びゃくし)は、皮膚の炎症を抑える薬の代表です。
連翹(れんぎょう)とか桔梗(ききょう)というのは排膿をうながす薬で、黄連(おうれん)、黄芩(おうごん)、山梔子(さんしし)は黄連解毒湯(おうれんげどくとう;症例105、219、294参照)の骨格です。
ただし、黄柏(おうばく)が入っていないのです。
というのは、黄柏は、黄連解毒湯を下にも効かせるために入っているのですが、わざわざそれを除いて、下の方向に効く薬をなくして、逆に桔梗(ききょう)、川芎(せんきゅう)、白芷という上に持っていく作用のある薬を集めて、最終的に、黄連、黄芩、山梔子の解毒作用、それから荊芥、防風、桔梗など、顔付近の皮膚に対する消炎作用を働かせようとしているのです。

かなり強力な化膿性慢性皮膚疾患治療薬で、非常に重症のにきびに使い、青年期の普通のにきびにはあまり効きません。
投与後しばしば一過性に悪化し、その後急速に改善することが多いです。

 

337.にきび、頭痛の漢方治療

次の症例は38歳、女性です。
にきび(特にあごのラインに多い)と頭痛(生理や天気と無関係)の漢方治療を求め、平成24年6月2日当院へ来院されました。
身長154cm、体重44kg、BMI18.6とやせを認めます。
他の症状として、便秘・足がむくむ・疲れやすい・肩こり・めまい・立ちくらみ・手足が冷える・夜中に目が覚める・生理不順(生理の周期がばらばら)などがあります。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、また色が紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ枝分かれしており、「瘀血」(おけつ)体質もはっきりとしておりました。
桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん;症例67参照)と頭痛に呉茱萸湯(ごしゅゆとう;症例51、169、196、261、293参照)を合わせて一ヶ月分処方しました。
6月30日に来られ、「頭痛は2週間ぐらいまでひどかったが、最近はずいぶんましになりました。にきびはあまり変わりありません。」といわれましたが、もう一ヶ月同じ処方をしました。
7月28日に来られ、「今回は1週間ぐらい頭痛がありました。にきびは変化ありません。」といわれましたが、もう一ヶ月同じ処方をしました。
8月25日に来られ、「頭痛は昨日1回あっただけです。呉茱萸湯は飲みやすいです。でもにきびは変化ありません。」といわれましたので、桂枝茯苓丸加薏苡仁を十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう);症例107、165、305、306参照)に変えたところ、9月25日に来られ、「にきびがきれいになりました。でも生理がまた不順になりました。」といわれました。
兵庫県では、特に社会保険では漢方薬は原則2剤までとされていますので、呉茱萸湯を中止して、やむなく桂枝茯苓丸加薏苡仁と十味敗毒湯だけにして、「頭痛がひどくならなければよいのに‥」と心配しておりましたが、10月22日に来られ、「頭痛は一度も起こらず、生理もきちっと来ました。にきびもきれいです。」と喜んでいただきました。
頭痛は「瘀血」によるものと考えられました。

なお、にきびについては、症例6、67、163、182、306、320、336、392もご参照ください。

338.妊娠中・産後の漢方治療

次の症例は33歳、女性です。
患者さんは、神戸の有名な漢方医のところへ、主婦湿疹の治療のためにずっと通われ調子良かったのですが、この度先生が亡くなられ、また妊娠もされた(妊娠3ヶ月)ので、薬を中止したところ、また再発したため、平成24年3月13日漢方治療を求め姫路市から来院されました。
薬は補中益気湯(ほちゅうえっきとう;症例15、166、267、285、328参照)と血虚の基本方剤である四物湯(しもつとう;症例54参照)が処方されておりました。
他の症状として、便秘傾向・吐き気・口の中が苦い・口が渇く・片頭痛・肩こり・痰がきれにくい・鼻づまり・半水・風邪が治りにくい・食後に眠くなる・夜中に目が覚める・頻尿など多彩です。
身長161cm、体重55kg、BMI21.2。
同じ処方をさせていただいたところ、次に6月4日(妊娠9ヶ月)に来られ、「切迫早産になりかけました。」といわれましたので、四物湯を当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん;症例14、158、241、249、254、265、330参照)に変えさせていただきました。
次に7月18日に来院され、「無事出産しました。」といわれましたので、また処方を元の四物湯に戻しました。
次に9月3日に来られ、「最近気分が落ち込むんです。」といわれましたので、四物湯を芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん;症例143、308参照)に変えさせていただきました。
次に10月19日に来院され、「調子いいです。」といわれました。

症例308にも書きましたが、芎帰調血飲は、産後ならどんな症状に使ってもよいといわれています。女性の基本処方である四物湯を基本にし、さらには気血水の流れを整える生薬が配合されています。
含まれる牡丹皮(ぼたんぴ)、益母草(やくもそう)は子宮内に残った悪露を排出させる作用もあります。また、抑うつ感、不安感をやわらげ、乳汁の分泌を正常化する効果もあります。


当帰芍薬散について(下田 憲先生)

妊娠したら当帰芍薬散に体が切り変ります
不妊の治療には方証一致による随証治療になります。例えば、瘀血体質だったら桂枝茯苓丸で瘀血を取り除いてあげれば妊娠が成立するかも知れません。加味逍遙散で神経系をなだめてあげた方が妊娠が成立するかも知れません。不妊治療だったらイコール当帰芍薬散というのは間違いだと思います。
妊娠が成立したらほとんど当帰芍薬散になりますが、たまに温経湯の場合もあります。でもほとんどの場合、当帰芍薬散です。
一般内科にはほとんど当帰芍薬散の人は来ないのですが、婦人科の場合は来るだろうと思います。婦人科だったら当帰芍薬散と桂枝茯苓丸と加味逍遙散とをきちんと見極めて投薬すれば95%の患者さんは満足してくれると思います。
あとの5%はどうするかというと、自分はこの患者さんで勉強できるのだと思って取り組むのですね。何が合うだろうかと思ってね。全部がうまくいったら勉強する必要がないのです。私なんかも最近は難しい人が来ると張り切るのです。

 

339.典型的な気虚(脾虚)の症例

次の症例は32歳、女性です。
患者さんは、漢方の本で調べたところ、自分の症状が「気虚」にピッタリだと思い、ネットで検索したところ、当院が見つかり、平成24年7月17日漢方治療を求めたつの市から来院されました。
症状は、便秘と下痢の繰り返し・腹が鳴る・腹がはる・腹痛・吐き気・胸やけ・みぞおちがつかえる・口内炎ができやすい・食欲不振・足がむくむ・汗をかきやすい・のどが渇く・肩こり・にきび・腰痛・体がだるい・疲れやすい・食後眠くなる・イライラ・動悸がする・立ちくらみ・手足の冷え・いやな夢をみる・気分が沈む・生理痛が強い・青あざができやすい・排尿痛など多彩です。
身長160cm、体重46kg、BMI18.0とやせを認めました。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また、両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
また色が紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ枝分かれしており、「瘀血」(おけつ)体質もはっきりとしておりました(小さな子宮筋腫があり、また原因となるような異常は見当たらないものの不妊症があります)。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん;症例14、158、241、249、254、265、330、338参照)人参湯(にんじんとう;症例8参照)附子(ブシ;症例2参照)も合わせて一ヶ月分処方いたしました。
次に8月7日に来院され、「少しずつよくなっています。ただ附子を飲むと暑いです。」といわれましたので、附子を中止いたしました。
次に8月31日に来院され、「少しずつ体力がアップしてきています。気分の浮き沈みも減ってきました。生理痛が全くなくなり、西洋の痛み止めを飲まなくてよくなりました。全体にとてもよい感じです。」といわれました。
このまま続けていく予定です。

脾虚については、症例97、159、291、391、423も参照してください。

340.帯状疱疹(ヘルペス)後神経痛(5)の漢方治療

次の症例は80歳、女性です。
約1年前に、左腕の帯状疱疹(ヘルペス)を発症。
総合病院皮膚科と麻酔科(最初に集中してブロック注射もした)で治療を受けられましたが、結局、左前腕の半分から下に痛みが残ってしまったそうです(特に手のひらの小指側が痛むそうです)。
その後近くの内科医院で、リリカ(症例255参照)という、末梢性神経障害性疼痛に用いて、神経痛をやわらげる新薬と、トラムセット(中枢神経系に作用し、鎮痛作用を示します。通常、非オピオイド鎮痛剤で治療困難な非がん性慢性疼痛、抜歯後の疼痛の治療に用いられます)と桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう;症例23、104、124、203、206、319参照)を処方されましたが、全く無効であったそうです。
困っていたところ、当院に通院中の患者さんの紹介で、平成24年10月3日、漢方治療を求めたつの市から来院されました。
身長148cm、体重52kg、BMI23.7。
入浴時には全く痛みを感じないようですので、冷えが原因と考え、前医と同じ桂枝加朮附湯附子(ブシ;症例2参照)を足して(元々、桂枝加朮附湯には附子は含まれておりますが、量が少ないため増量しました)一ヶ月分処方いたしました。
また、よく話を聞くと、お湯で溶かずに飲まれておりましたので、必ずお湯で溶いて飲むように指導いたしました。
次に10月29日に来院され、「痛みがすっかりとれました。」と大変喜んでいただきました。

この症例をみてわかることは、温める漢方薬を体を冷やす西洋の解熱鎮痛薬と併用すると、全く効かなくなるということと、特に温める漢方薬は必ずお湯で溶いて飲まさなければならないということです。

帯状疱疹(ヘルペス)後神経痛については症例5、122、124、255も参照ください。

341.原因不明ののどの痛みの漢方治療

次の症例は76歳、女性です。
他院内科で高コレステロール血症で、通院されている方です。
平成24年9月の初め頃より、夜が来るとのどが痛み、本当に夜が来るのが怖くなったそうです(のどは夜寝てから痛くなり、のどがからからになるそうです。口腔外科では、「唾液の分泌が悪く、シェーグレン症候群かもしれないし、年齢的なものかも知れない。」といわれたそうです)。
また、胸が苦しい感じもあるそうです。
その他、夜間頻尿(夜2~3回トイレへ行く)・朝方だけ鼻水、くしゃみ・頭痛・肩こり・食後眠くなる・息が吸いにくい・動悸がする・耳鳴り・立ちくらみ・手足の冷え・夜中に目が覚めて、眠りが浅いなど多彩な症状があります。
身長153cm、体重42kg、BMI17.9とやせ(脾虚体質をを疑う代表的な症状です)を認めました。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また、両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
また色が紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ枝分かれしており、「瘀血」(おけつ)体質もはっきりとしておりました。
症例64、65、146、217の咽喉頭異常感症ではないかと考え、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)(症例64、102、103、217参照)麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう;症例49、80、81参照)(症例49で書いたように、早朝というのは、1日のうちで天の陽気が最も少ない時間帯です。そのため、もともと陽虚体質の方は、本症例のように、特に朝方に症状が出やすい)を合わせて一ヶ月分処方しました。
10月5日に来られ、「のどの痛みは変わりませんが、鼻水、くしゃみはだいぶよくなりました。」といわれましたので、半夏厚朴湯に変えて加味帰脾湯(症例45、193、239、291、308参照;加味帰脾湯の人は、ちょっと五臓の「脾」が衰えていて(脾虚体質)、軽いうつがある人に使います)を合わせて一ヶ月分処方しました。
次に10月29日に来院され、「薬を飲んだその日の夜から、のどは痛くなくなりました。口腔外科では、口が渇くせいではないかといわれていましたが、それは改善していませんので、関係ないようです。鼻水、くしゃみも全く出なくなりました。」といわれましたので、同じ処方を続けていく予定です。

342.耳鳴りの漢方治療

次の症例は症例298の二例目の方(67歳女性)です。
平成24年10月6日、コレステロールの薬を取りに来られた時に、両耳の耳鳴り(約一ヶ月前より出現)を訴えられました。
左の方が強く、ワァーンという音だそうです。
血圧は130/72mmHgと正常でした。
抑肝散(よくかんさん;症例25、278、298参照)が効くのはわかっておりましたので、一ヶ月分処方しました。
次に11月6日に来院され、「おかげさまですぐに耳鳴りは止まりました。」といわれました。

耳鳴りの漢方治療については、症例34、131、430も参照ください。


耳鳴りについて(永田 郁夫 先生)

虚証の耳鳴りは、ジージーやミーンミーンと虫の声のような小さ音色が持続することが多く、気になって眠れないのが特徴ですが、実証の場合には、ザーザーという海の波音や、ゴーゴーとジェットのような音色が多く、耳の張りや痛みを伴うこともあります。
実証タイプの耳鳴りの要因は五臓六腑の肝と胆に関与しています。
肝・胆は精神作用と強く結びついているため、イライラ感や、怒りっぽくなるなどして興奮すると、肝・胆系の経絡を通る気血の流に乱れが生じ、耳に栄養(気血)が行かなくなるため、耳鳴りを発症させます。そのため、怒りや過激な精神的ストレスなどが起因となって,急にキーンという金属音のような耳鳴りが発症することがります。
この場合、鎮静や交感神経抑制作用のある釣藤鈎や柴胡などを含む抑肝散を用いると良いでしょう。
筆者は、第22回アジア薬剤師会連合学術大会(2008年11月)において、抑肝散が心身症、神経症、更年期障害に伴う心因性の耳鳴りに対して、服用期間4~10週間で有効率73%を示し、患者は50~70歳に多く、効果も50~70歳に集中していることを発表しています。
抑肝散には,五臓である肝・胆の帰経(生薬の作用を臓腑経路に関連づけたもの)をもつ生薬が多く含まれ、しかも現代医学的解釈では、肝・胆は自律神経系に深く関与しているとされています。

漢方医薬学雑誌● 2009 Vol.17 No.3(69)

 

343.小児の頻回の嘔吐・下痢の漢方治療

症例は2歳5か月の女児(体重12kg)です。
平成24年11月5日夜より急に嘔吐・下痢が始まり、合計10回嘔吐し、総合病院の救急外来を受診。点滴を受け、吐き気止めのナウゼリン座薬をもらい帰宅するも、それを使っても嘔吐はおさまらず、それ以後も5回嘔吐したそうです。体温37.1℃。
知り合いに当院へ行くと、お尻から漢方薬を入れて一発で治してくれると聞き、朝外来受診されました。脱水のためかぐたっとして元気がありません。
症例3で述べたように、当院では小児が嘔吐や下痢で来院されても、ほとんど点滴することはありません。
症例3と同じように、五苓散(ごれいさん);症例215参照)1包と人参湯(にんじんとう;症例8参照)1包をお湯に溶いてお尻から注入しました。
念のため午後に連れてこられましたが、それ以後は嘔吐はおさまり、隣の薬局で購入したOS-1(オーエスワンは、電解質と糖質の配合バランスを考慮した経口補水液)を飲み、元気になられていました。
軽い下痢が、2回ほどあったということなので、念のためビオフェルミンだけを処方させていただきました。
漢方を使わず、もう一度病院へ行っていたら、確実に入院となっていたでしょう。
漢方は医療費も節約でき、患者さんも苦しまずにすむので本当にすばらしいです。

同じような症例を、症例3、236、237にも載せております。

344.インフルエンザ様疾患の病初期に葛根湯の短時間頻回投与法が著効した症例

次の症例は19歳、女性(私の長女)です。
3日ぐらい前より、下痢、吐きたいのに吐けない感じ、腹痛がありました。
平成24年11月13日の朝より、少しのどや頭が痛く、熱っぽくて体がだるかったそうですが、そのまま学校へ行きました。この朝の時点で、上記の消化器症状は消えていたそうです。
朝の10時40分頃、頭が割れそうに痛みだし、動くのがつらくなったそうです。
学校を出て14時に帰宅しました。帰宅途中の電車の中では、筋肉痛(太ももがずきっと痛む。足を伸ばすと少し楽になったそうです)
のため、椅子に座っているのもつらかったそうです。帰宅後熱を計ると38.5℃あったそうです。
15時からは眠ったそうです。
19時に私が帰宅した時には、顔を真っ赤にしてふとんで寝ていました。
起こして熱を計ると、39.5℃ありました。こんな高い熱を出したのは生まれて初めてで、とにかく頭痛、筋肉痛、関節痛で死にそうなくらいつらいと言いました。首すじや背中のあたりに、ドーンとした凝りも感じるともいいました。
赤い顔をしておりましたが、熱を計るためふとんから出ると、普通の顔色になり、ぞくぞくするとのことで、「ふとんに入っている方が楽だ。」といいましたので、葛根湯(かっこんとう;症例7、167参照)を飲ませました。
飲み方は、1回2包を、市販の生姜湯に溶かして飲ませました。
1回目を飲んでふとんに入り一時間たちましたが、大きな変化はなく、そこでまた2包を生姜湯に溶かして飲んだところ、一時間たった21時にじわっと汗ばんできて、体がスーッと楽になってきたそうです。
11月14日、0時の時点で熱を計ると、まだ38.5℃ありましたが、頭が重い以外の症状はとれておりました。
柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)を2包お湯に溶いて飲ませ、ねむりました。
朝になり、5時の時点で熱を計ると、37.5℃ありましたが、ごく軽い頭痛のみで、元気になっておりました。柴胡桂枝湯をもう一度2包お湯に溶いて飲ませました。どうしても当日は学校を休めない事情があり、そのまま登校しました。しかし、学校では特に苦痛もなく、帰宅後、念のため18時に熱を計ると、35.7℃だったそうです。

症例358に、「インフルエンザ様疾患に対する漢方薬の間違った使い方の症例」を載せていますので、ご参照ください。

葛根湯の出展は西暦200~205年 張仲景によって著された「傷寒論」にその源流があり、そこには以下のように書かれています。
《背中や肩が机の板ように硬くなり、汗が出なくて風に当たると寒気がする時は、太陽病だから葛根湯で治療しなさい》

葛根湯の中味をみてみますと、葛根(かっこん)、麻黄(まおう)、桂枝(けいし)、生姜(しょうきょう)、甘草(かんぞう)、芍薬(しゃくやく)、大棗(たいそう)の7種の生薬が入っています。

葛根は熱を冷まし、筋肉のこわばりをとる働きをします。
麻黄+桂枝は発熱を促進し、体の表面部にある病邪を汗とともに発散させます(解表;注1)。
同時に芍薬で発汗しすぎになることを防ぎ(芍薬には止汗作用がある)、生姜、甘草、大棗で消化器の働きを高めます。

この様に7つの生薬があいまって効果を発揮しますが、先ず発汗を促進するために、
1.熱いうどんやお粥をすすったり、ふとんをかぶったりする(麻黄湯は不要;後述)。
2.7.5g分3というような服用では効果がないので、表証(注2)の寛解を見るまで(つまり汗をかくまで)、頻回に大量を服用させる必要がある。

注1 解表について
体温を上げて発汗を促し、ウイルスの増殖を抑えて病気を治す方法(体の表面部にある病邪を汗とともに発散させる)。
そしてそれを実現する生薬の組み合わせが、「麻黄+桂枝」(桂枝で 体表を温め、麻黄で発汗)である。

発汗して解熱するのは、当然のことなのですが、重要なことは、発熱以外の色々の諸症状も改善がされるということです。
発汗とともに気分爽快となり、身体の痛み、頭痛、便秘、食欲不振、倦怠感等々の諸症状のほとんどが改善され、そこから完治に向かう。すなわち葛根湯を使う目的は、発汗させることであり、それによって諸症状を緩解・完治させることです。
西洋の解熱・鎮痛剤を用いると、発汗しないで下熱することがよくある。しかし、それは単に熱が下がっただけのことで、決して身体の爽快感は得られないものである。解熱後も体が重く、サッパリ感がない。何とも不快な感じのする解熱です。
さらに無発汗解熱では、一度熱が下ったとしても、元気が回復せず、多くの場合、再度発熱してくるケースが多い。
結局、無汗での解熱は、熱が下がること以外には、気分の爽快も、病気そのものが癒えることは少ないということがわかります(本症例をみてわかるように、葛根湯では、熱は39.5℃から38.5℃へ1℃しか下がっていないのに、発汗により不快な症状はとれております)。

注2 表証について
悪寒・発熱・頭痛・咽頭痛・鼻汁・項背部のこわばりと痛み・四肢の関節痛・筋肉痛など。
これらの症状は病気が体表にある証(=表証という)
証;病名(診断名)に相当するもの



麻黄湯・葛根湯の鑑別法(下田 憲先生)

1.麻黄湯は顔が紅く、布団をかけると、「もう暑くていやになる」、あるいは、「具合が悪くなる」と訴えます。葛根湯は普通の顔で、布団をかけると、「気持ち良い」という。
子供では布団を跳ね除ける(=麻黄湯)か、布団にもぐってしまう(=葛根湯)か、で鑑別する。

麻黄湯を使う人は、皮下に熱が鬱積している。だから麻黄湯の人は、熱があって寒がるけれど、布団をかけると暑がるのです。
葛根湯の人は、熱はもう少し深いところにあって、皮下は冷えているので布団をかけていたがる。熱が皮下まで伝わっていき、冷えている皮下が温まり、熱で中和された寒邪が汗と一緒に外へ出て行きやすくなる(下記の江部先生の図を参照のこと)。

2.両者とも無汗だが、
葛根湯の人は、皮膚はそんなに強くなく、皮膚がすぐ開こうとしていて、皮下に汗がたまっているので、じっと触っていると無汗なのに、何となく汗を感じる。
麻黄湯は、暖房のヒーターに触っているような熱さで「水」の存在を下に感じない。

3.葛根湯の人は、よく聞くと、そう言えば2、3日前から、「妙に食欲がなかった」とか、「いつも便秘しないのに便秘していた」とか、「下痢(腹痛を伴い、1回行ってもすっきりしない)をした」、「吐き気・腹痛」、「お腹が張る」などの胃腸症状があり、そして変だなと思っていたら突然熱が出たと言います(本症例がまさしくこれです)。

漢方の考える“外殻”の構造(江部洋一郎先生)
画像の説明
皮(ひ)‥表皮と乳頭層の部分。外殻の最外層をなし、全身を覆っている。外邪に対する最初の防衛網をなす。
肌(き)‥真皮と皮下組織。体毛は肌の場所から生じている。
腠理(そうり)‥毛孔と汗孔の総称。(汗の出口)

画像の説明
葛根湯証は、寒邪が皮を外束し、風邪が肌から筋・肉の深さまで侵入している。そのため麻黄湯証より深部の肌・肉(筋肉)・筋(腱)に 鬱熱がみられる

画像の説明
腠理が閉じているため、肌の熱は腠理から放散できず、どんどん高じて鬱熱を生じ、肌の熱はますます上昇する。
画像の説明

345.九味檳榔湯(くみびんろうとう)の症例

次の症例は症例177の不安神経症・パニック障害の患者さんです。
その後、多少の波(平成23年9月、台風が近づいてきたときに冷や汗が出たり、天井が回ったりして、その後体がしばらくしんどかった等)はありましたが、状態は落ち着いておりました。
平成23年9月6日よりは、加味逍遥散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、317、318、326、330、336参照)補中益気湯(ほちゅうえっきとう;症例15、166、267、285、328、338参照)を中心に、たまに肩こりの時には、葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう;症例12参照)を出したりしておりました。
平成24年2月に来られた時には、「電車にもちょこちょこ乗っています。」といわれました。
平成24年10月22日に来られた時に、「肩こり(特に両肩甲骨内側の上部が痛い)がひどく、体が冷えて、下腿がむくんでだるい。特にふくらはぎがだるくて、自分でよくもみます。」といわれましたので、補中益気湯に変えて、九味檳榔湯(くみびんろうとう;症例150参照)を処方したところ、11月16日に来られ、「便秘もなくなり、肩こりもなくなりました。とても体調がいいです。」と大変喜んでいただきました。

九味檳榔湯は昔から、脚気の薬としてよく用いられています。
本剤は、脾胃に作用し、裏(=消化管)虚を補いながら、停滞した気を動かして水を去る方剤構成になっています。

いろいろな文献を読んでみると、次のような特徴が挙げられます。

  • 温める薬である(冷え症に使う)。
  • 気欝、水毒、軽度の瘀血の症候を伴う。
  • 変形性膝関節症(特に水腫型)、脊柱管狭窄症、坐骨神経痛によい。
  • 精神的ストレスにより悪化する、慢性痒疹、皮膚瘙痒症、慢性じんましんによい(症例476参照)。
  • 肩こり(葛根湯と同様、頸椎・胸椎を含む縦に長い長方形で凝る。両肩甲骨内側上部の圧痛が著明)によい。
  • 頭痛、特に呉茱萸湯(ごしゅゆとう;症例51、169、196、261参照)無効の頭痛によい。
    裏虚が背景にあるため、中焦を中心とした気滞が主となり、その結果として、上部の熱のこもりが頭痛・肩こりを形成する(龍野 佐知子先生)
  • 痰湿の過剰蓄積による肥満によい(本剤の辛味、苦味は生物にとり「毒」を連想させるので、疎泄機能が働くので、体重減少につながる)。
  • 腹満、腹の脹った痛み、便秘などの腸気滞症状によい(過敏性腸症候群)。下剤として意識はしなくてよい。
  • 副作用は全くといってない。
  • ふくらはぎに圧痛があるような場合によい(患者を仰向けにねかせ、膝を曲げて、ふくらはぎのところを軽く触っても痛がる。患者の2/3以上でみられる。本剤を使用すると、1週間ぐらいで握痛が減少してきて、気分がよくなった、食欲が出てきた、疲れなくなったなどと喜ばれる。)
  • こむら返りによい
  • 妊娠中はかなりの頻度で本処方適応症を認める
  • 手足のしびれ(ビタミンB12製剤を入れるような人)によい(症例581参照)

 

346.九味檳榔湯(くみびんろうとう)の症例(2)

次の症例は38歳、女性です。
肩こり、頭痛、便秘の漢方治療を求めて、平成23年3月12日当院へ来院されました。
身長164cm、体重59kg、BMI21.9。
この方の舌を見ると、色が紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ枝分かれしており、「瘀血」(おけつ)体質がみられました。
他の症状として、腹がはる・腹が鳴る・皮膚が乾燥する・体がだるい・イライラする・手足が冷える・生理が早くなったり、遅くなったりする・夜中に目が覚めるなどがあります。
この方には、最終的に加味逍遥散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、317、318、326、330、336参照)呉茱萸湯(ごしゅゆとう;症例51、169、196、261、293、337参照)に、少量(1g)のダイオウ末を合わせることで、便秘と頭痛はうまくいきましたが、肩こりは葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう;症例12参照)を使ってもだめで、症状が残ってしまいました。
整形では、「単なる肩こりです。運動しなさい。」とだけいわれ、ハイペン(解熱鎮痛薬)が出たそうです。

平成24年10月25日に来られた時に、便秘・冷え・肩こり・頭痛・気虚などからこの症例も、九味檳榔湯(くみびんろうとう;症例150参照)が効くのではないかと考え、加味逍遥散と合わせて処方したところ(呉茱萸湯は中止)、「肩こりがなくなりました。頭痛もなく、ダイオウ末がなくても毎日便が出ます。」と大変喜んでいただきました。

症例345に、九味檳榔湯は呉茱萸湯無効の頭痛によいと書きましたが、呉茱萸湯の効く頭痛にも便秘のある症例などには変えて使えそうです。

347.過敏性腸症候群の下痢型の漢方治療

次の症例は18歳、女性です。
昨年の秋頃より、よくお腹をこわす(特に誘因はなく、水様便~軟便、腹痛はある時もない時もある)ため、総合病院を受診し、大腸内視鏡検査や血液検査を受けられましたが、「特に異常ない。精神的なものである。」といわれたそうです。
トランコロン(腸管神経に作用し、腸の異常な運動を抑える薬で、過敏大腸症(腹痛、下痢・便秘をくりかえすなど)の症状を改善する)、ドグマチール(脳内の伝達物質、ドパミンに作用することにより、抑うつ気分、不安、緊張、興奮をしずめ、精神状態を安定化します。通常、うつ病・うつ状態の治療や精神状態の安定化に用いられます)、ビオフェルミン(乳酸菌製剤)を処方されましたが、約10日ごとに上記の症状が続くため、平成24年10月1日近くの開業医を受診されましたが、そこの先生から、漢方治療をすすめられ、お隣のたつの市から10月5日当院へ紹介されました。
そのほかの症状として、快便感がない・腹がはる・疲れやすい・食後眠くなる・イライラする・のぼせやすいなどがあります。
身長168.9cm、体重52kg、BMI18.2とやせを認めました。
この方の舌をみると、舌先が紅くなっていました(舌尖紅潮;症例72、141参照)。また、舌の裏側の静脈が枝分かれして、「瘀血」(おけつ)体質と診断いたしました。
腹診では特に異常ありませんでした。
加味逍遥散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、317、318、326、330、336参照)半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう;症例17、89、163、176、179、188、201、218、286参照)を合わせて2週間分処方したところ、10月16日に来られ、「時々腹痛があるぐらいで、下痢はありません。」といわれましたので、さらに一ヶ月分処方したところ、11月14日に来られ、「元気です。下痢も腹痛も全くありません。」といわれました。
受験生ですので、とりあえず受験が終わるまではこのまま飲んでいただく予定です。

過敏性腸症候群については、症例17、189,192、「各種疾患の漢方治療」の過敏性腸症候群の項を参照してください。

348.九味檳榔湯(くみびんろうとう)の症例(3)

次の症例は79歳、女性です。
平成24年5月初旬より、右の坐骨神経痛が出現し、総合病院の整形外科でプロレナール(手足の血管を広げ血流をよくするお薬)とリリカ(;症例255参照)を処方されましたが、全く無効のため、漢方治療を求め、平成24年5月23日たつの市から当院へ来院されました。
他の病気として僧帽弁閉鎖不全症があり、ワルファリン(抗凝固剤)と利尿剤のダイアートアルダクトンを飲まれています。
身長153cm、体重37.5kg、BMI16.0とやせを認めます。
他の症状として、便秘・腹が鳴る・腹がはる・薬で胃があれやすい・足や顔がむくむ・肩こり・湿疹がよくできる・夜間に咳が多い・痰が多い・鼻水・疲れやすい・手足の冷えなどがあります。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。また紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、瘀血(おけつ)体質もあると診断いたしました。そこで、瘀血体質の神経痛に使う、疎経活血湯(そけいかっけつとう;症例1参照)に、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう;症例69参照)を足して(独活寄生湯(どっかつきせいとう;症例68参照))、それに体を温め、痛みをとるブシ末を合わせて処方しました。
この処方を続け、9月21日に来られた時には、「坐骨神経痛はすっかりよくなりました。」といわれましたが、顔のむくみや、肩こり、便秘などが残ったため、11月19日から、疎経活血湯に変えて九味檳榔湯を処方したところ、12月17日に来られ、「尿量も増え、西洋薬の利尿剤ではとれなかった 足や顔のむくみがすっかりとれました。また便も普通便が毎日出ます。」といわれ、大変喜んでいただきました。

この症例は症状を眺めてみると、最初から九味檳榔湯を使っていればもっと早くよくなっていた症例と考えられました。

349.九味檳榔湯(くみびんろうとう)の症例(4)

次の症例は44歳、女性です。
症例346と同様に肩こり(仕事柄一日中パソコンをするためと思われる)、頭痛、便秘の漢方治療を求めて、平成22年5月22日姫路市から当院へ来院されました。
身長165cm、体重58kg、BMI21.3。
特に肩こりが強く、アリナミン等肩こりに良さそうなものを、次々に試しましたが効果がなかったそうです。
そのほかに快便感がない腹が鳴る・腹がはる・胃がもたれる・口内炎が出来やすい・汗をかきやすい・口が渇く・手足が荒れる・体がだるい・疲れやすい・腰痛・耳鳴・手足が冷える・夜中に目が覚める・眠りが浅い・生理不順・出血量が多い・生理痛が強い・青あざが出来やすいなど多彩な症状があります。
この方の舌を見ると、腫れぼったく、歯痕舌を認め、「気虚」体質と考えられました。また紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、瘀血(おけつ)体質もあると診断いたしました。
加味逍遥散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、317、318、326、330、336参照)を基本薬として、頭痛・肩こりには呉茱萸湯(ごしゅゆとう;症例51、169、196、261、293、337参照)五苓散(ごれいさん);症例215参照)を処方したところ、平成23年2月19日には、「生理も順調で痛みもなくなり、胃腸も調子いいです。以前は毎日頭痛薬を飲んでいましたが、今回は月に2錠ですみました。」といわれました。しかし、梅雨時や、低気圧が近づいた時や生理前にはやはり頭痛がひどくなり、以前よりはかなりよいが、もう一歩という状態が続いておりました。
そこで、平成24年11月17日に来られた時に、この方も九味檳榔湯ではないかと考え、加味逍遥散に九味檳榔湯を足して処方したところ、12月8日に来られ、「頭痛も肩こりもすっきりとよくなりました。ただ便が少しゆるめです。」といわれました。

最近、外来をしていて、九味檳榔湯を出さない日はなくなりました。多い日には3、4人に処方した日もありました。
聖光園細野診療所では、外来患者の三分の一は九味檳榔湯だと聞いたことがありますが、最近それも頷けるような気がしてきました。いい薬です。

350.胸が凝る感じ(息が入ってこない感じで息苦しい)の漢方治療

次の症例は53歳、女性です。
上記症状の漢方治療を求めて、平成24年8月13日姫路市から当院へ来院されました。
近くの内科で当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん;症例14、158、241、249、254、265、330、338、339参照)を処方された様ですが、全く無効だったそうです。
身長167cm、体重52kg、BMI18.6とやせを認めました。
そのほかに肩こり(背中が凝る感じで、生理が来るとすっとするが、生理が最近ないので調子悪い)・体が冷える・足がむくむ・体がだるい・疲れやすい・食後眠くなる・寝つきが悪い・時々痔出血があります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また、両側の舌の縁に、歯型が波打つようについており(歯痕舌(しこんぜつ))、「気虚」体質と考えられました。
また色が紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ枝分かれしており、「瘀血」(おけつ)体質もはっきりとしておりました。
六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318参照)加味逍遥散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、317、318、326、330、336、349参照)を合わせて一ヶ月分処方いたしました。
次に9月8日に来院され、「胸が凝る感じは1服飲んだだけで消えましたが、まだ体がしんどいです。」といわれましたので、六君子湯に変えて補中益気湯(ほちゅうえっきとう;症例15、166、267、285、328参照)を処方しました。
すると、1週間後の9月15日にまた来られ、「37℃後半の微熱が続き、近くの内科で採血検査を受けましたが、異常ないといわれた。」といわれましたので、「気虚発熱(症例15、166、267参照)の可能性が高いから、今の薬を続けるように。」と話をさせていただきました。
10月13日に来られた時には、「熱はすっかりおさまり、疲れもずいぶんましです。」といわれました。
これで一件落着と思われましたが、12月8日に来られた時に、「また上記の症状が出るようになった。」といわれましたので、加味逍遥散を九味檳榔湯に変えて一ヶ月分処方したところ、平成25年1月4日に来られ、「息が入ってこない感じの、ゼロゼロした息苦しさ(本人の弁)がすっかりとれました。」といわれました。

本当に最近九味檳榔湯に助けられることが多いです。良い薬です。