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451.自律神経失調症の漢方治療

次の症例は68歳、女性です。
平成26年3月に天井がグルグル回る感じのめまいが起こるようになり、近くの内科で点滴をしてもらい改善したそうです。
平成26年6月頃より再びフラフラするようになり6月21日、近くの耳鼻科を受診し、MRI検査を受けましたが、「異常なし。」といわれたため、今度は総合病院の耳鼻科を受診され、種々の検査を受けましたが、結果は同じく「異常なし。」といわれ、グランダキシン(自律神経調整薬)を処方され、フラフラはましになったそうですが、今度は、下半身は冷えるが、上半身はカァーと熱くなる、疲れやすく常に横にならないといけないなどの症状が続くために、知人の紹介で平成26年8月13日、漢方治療を目的に太子町より受診されました。
身長156cm、体重66kg、BMI27.1とやや肥満傾向です。
他の症状として、腹がなる・食欲不振・薬で胃が荒れやすい・頻尿・頭痛・耳鳴り・夜中に目が覚めるなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。また紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、「瘀血」(おけつ)体質もはっきりとしておりました。
血圧が152/88mmHgと高めでしたので、高血圧のめまいによく使う釣藤散(ちょうとうさん;症例60、132、274、324、445)加味逍遥散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、317、318、326、330、336、349、356、368、371、378、381、391、395、399、405、407、416、419、425、429、430、441参照)を合わせて一ヶ月分処方したところ、9月6日に来られ、「足の冷えはましになりましたが、上半身はまだ熱く、疲れやすいです。また時々息苦しくなります。」といわれましたので、加味逍遥散を桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう;症例57、224、286参照)と強壮・強精作用のあるコウジン末(;症例449参照)に変えたところ、10月4日に来られ、「ふらふらがすっかりとれて、上半身の熱くなるのも以前ほどでなくなりました。グランダキシンも飲まなくてよくなりました。本当に元気になりました。」と大変喜んでいただきました。

漢方がお役に立ててよかったです。

452.不妊症の漢方治療

次の症例は39歳、女性です。
産婦人科で不妊治療を受けられていますが、「自然妊娠は難しい。」といわれています(薬は、デュファストン(黄体ホルモン)、ダクチル(子宮収縮抑制薬)が処方されています)。
知人の紹介で漢方治療を求めて、平成26年6月16日赤穂市から来院されました。その他の症状として、便秘・腹が張る・胸焼け・腹痛・口内炎ができやすい・手や顔がむくみやすい・手足が冷える・肩こり・体がだるい・疲れやすい・立ちくらみ・生理痛が強い・青あざができやすいなどがあります。
身長153cm、体重47.5kg、BMI20.2。
冷え・むくみ・生理痛に使う、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん;症例14、158、241、249、254、265、330、338、339、387、400、401、423症例)六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318、350、352、354、365、391、411、419、430、441、447、450参照)を合わせて処方したところ、7月11日に来られ、「便秘もなくなり、胃の調子もいいです。生理痛もなくなり、今まで経血がドロドロだったのが、さらさらになりました。」といわれました。
そのまま続けていただいたところ、10月7日に来られた時に、「妊娠が判明しました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

不妊症については、症例14もご参照ください。

453.小児気管支喘息の漢方治療(4)

次の症例は13歳2ヶ月、女児です。
幼稚園の頃から、近くの漢方医で小児気管支喘息の治療を受けられていたそうですが、治ることはなく結構発作が出ていたそうです。
その先生が亡くなられ、仕方がないので近くの医院(漢方専門医ではない)で同じ漢方を処方してもらっていたそうですが、当院のホームページを見て、平成26年9月22日漢方治療(神秘湯)を求めて神戸市から受診されました。
処方されていた薬は、

  • 二陳湯(にちんとう)2.5gと平胃散2.5gを分2朝・夕
  • 麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)と5gと半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)1.5gと桔梗湯(ききょうとう)1.5gを分3で毎食後でした。

身長147cm、体重33.0kg。
今回来院時も軽い発作が出ておられました。
今飲んでおられる薬はすべて中止し、神秘湯(しんぴとう;症例74参照)5gを分2朝・夕で一ヶ月分処方したところ、10月18日にお母さんが来られ、「最初の3日間だけ発作が出ましたが、それ以後一度も発作を起こさなくなりました。」と、大変喜んでいただきました。

なんと5種類の漢方薬で抑えられなかった喘息発作が神秘湯だけで見事に出なくなりました。
このまま2年続けて、根治に持っていく予定です。

漢方がお役に立ててよかったです。

同じような症例を症例74、172、446にも載せております。

454.慢性の下痢・腹痛の漢方治療

次の症例は43歳、女性です。
慢性の下痢・腹痛の漢方治療を求めて、平成26年7月18日姫路市から来院されました。
その他の症状として、腹が張る・腹が鳴る・胸がつかえる・口が渇く・頭痛・肩こり・手足が冷える・疲れやすい・いらいらする・寝つきが悪い・眠りが浅い・生理不順・出血量が多いなどがあります。
身長157cm、体重49kg、BMI19.9とやせを認めます。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。また白苔も認めました。
啓脾湯(けいひとう;症例240、364、398、401参照)を一ヶ月分処方したところ、8月13日に来られ、「まだ便はゆるいです。時々腹痛もあります。」といわれ、「自分でも神経質なほうだと思います。」といわれましたので、香蘇散(こうそさん;症例217、293、301、441参照)を加えてさらに一ヶ月分処方したところ、9月20日に来られ、「腹痛はなくなり、下痢も1週間に1回ぐらいに減りました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

455.ぎっくり腰の漢方治療

次の症例は私です。
家の中で、両方の手に20kgの水の入った容器を持ち歩いたところ、飼い犬が前をチョロチョロしたため、それをよけようとして最初、腰に違和感を感じ、当初はさほど気にならなかったのに時間の経過と共に腰痛となり悪化していきました。

  • 上半身を起こすことがすっとできない。
  • おじぎをすることも、体を反らすことも困難。
  • さっさっと歩けない。
  • くしゃみ、咳で痛みが強まる。
  • 寝返りが痛くて、寝る姿勢を変えることが困難

などの症状がその日の夜から出ました。
翌日の朝、さらに症状が悪化していました。
そこで、筋肉や神経が炎症して腫脹しているのを引かせる、麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう;症例439参照)と痛みをとりあえず引かせるため芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)を合わせて、2時間ごとに3回飲んだところ、昼までに痛みはほとんどなくなりました。

これに味をしめて、患者さんにも使ってみました。
症例は77歳、女性です。
高コレステロール血症で当院通院されていますが、平成26年9月26日、「ぎっくり腰になった。」と来院されました。西洋の痛み止めと、湿布薬を希望されましたが、「もっといい薬があるから。」と、漢方薬をすすめさせていただきました。
10月20日、通常の薬を取りに来られた時に、話を聞くと、「次の日にはすっかり治っていました。漢方って、本当にすぐに効くんですね。」と、びっくりされたようです。

漢方がお役に立ててよかったです。

456.流涙の漢方治療

次の症例は76歳、男性です。
2年前、流涙のため眼科を受診したところ、「アレルギーではなく、大きな異常はない。年のせいだ」といわれ、目薬を処方されたそうですが改善せず、その後いろいろな目薬を処方されても改善しなかったそうです。
平成26年10月22日、奥さんが漢方治療を希望され、付き添いで来られた時に、ついでに相談を受けました。
目が赤く充血しておりましたが、かゆみはないそうです。
眼疾患(結膜炎、涙嚢炎、翼状片(よくじょうへん)など)に使う、越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう;症例109、448参照)を2週間分処方したところ、11月1日に来られ、「目の赤味もとれ、流涙もおさまりました。」といわれました。

漢方のよいところは、このように病名が決まらなくても処方が出来るところです。

漢方がお役に立ててよかったです。

457.顔がほてるの漢方治療

症例は86歳男性です。
総合病院内科に高血圧症・糖尿病・不眠症等で通院中の患者さんです。
最近夕方になると顔がほてるようになったため、漢方治療を求め、平成26年9月24日来院されました。
身長173cm、体重58kg、BMI19.4とやせを認めます。
血圧152/72mmHg、体温は37.2℃でした。
薬は、アダラートCR・ミコンビ(高血圧症の薬)、グリミクロン(糖尿病の薬)、タケプロン(胃薬)、プルゼニド(便秘の薬)、レンドルミン(不眠症の薬)、ハルナール(前立腺肥大症の薬)を処方されています。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。腹診では下腹部が軟弱無力で、圧迫すると腹壁は容易に陥没し、押さえる指が腹壁に入るような状態(小腹不仁(しょうふくふじん))を認め、腎虚(腎虚については症例58、128、161、194、216参照)と考えられました。
冷えはないようなので、六味丸(ろくみがん;症例128、194、412、414参照)を一ヶ月分処方しました。
10月23日に来られた時には、「夕方になると顔がほてって困っていたのがよくなりました。ごはんもよく食べれるようになりましたし、お風呂にも入れるようになりました。」と大変喜んでいただきました。
また体温も以前は37℃前後であったのが、最近は36℃前後になったそうです。血圧も128/64mmHgと下がっていました。

お風呂に入ると、よけいに顔がほてるため、風呂に入れなかったそうです。

漢方がお役に立ててよかったです。

同じような症例を症例414にも載せております。

458.抜け毛の漢方治療

次の症例は64歳、女性です。
平成26年7月頃より髪の毛が目立って抜けるようになり、皮膚科を受診したところ、セファランチン(円形脱毛症等に使用する薬)と塗り薬が出たそうですが、全く効き目はなかったそうです。
「甲状腺機能低下症ではないか。」と心配され、平成26年9月8日当院へ来院されました。
採血をしましたが、甲状腺を含め全く異常を認めませんでしたので、漢方治療をお勧めしました。
症例54に書いておりますが、抜け毛は漢方では、「血虚」に該当しますので、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう;症例69参照)を一ヶ月分処方しました。
10月7日に来られた時には、「少しましかな。」といわれました。さらに一ヶ月分処方したところ、11月4日に来られ、「髪の毛がぐっと増えてきました。手で押さえてみたら厚みが出てきました。今まで1日に300から400本ぬけていたのが、100本ぐらいになりました。」と大変喜んでいただきました。

漢方がお役に立ててよかったです。

抜け毛に関しては、症例498も参照して下さい。

459.頭痛の漢方治療

症例51、199に続き薬物乱用頭痛(薬物乱用頭痛については症例51に詳しく記載しておりますのでご参照下さい)の症例を載せます。
症例は32歳、女性です。
頭痛がひどいため、平成26年8月29日漢方治療を求めて来院されました。
前頭部中心に頭痛があります。特に朝方がひどく、肩こりもあります。毎日頭痛薬(イブ)が必要(多い日は1日2回飲む)です。
そのほかの症状も多彩で、便秘・胃がもたれる・胸やけ・のどが痞える・薬で胃が荒れやすい・体がむくむ・体がだるい・疲れやすい・のぼせる・腰痛・気分が沈む・寝つきが悪い・生理不順などがあります。
身長160cm、体重82kg、BMI32と肥満を認めます。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また、両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
手足、顔すべてむくみやすいとのことでしたので、五苓散(ごれいさん;症例215参照)六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318、350、352、354、365、391、411、419、430、441、447、450、452参照)を合わせて処方したところ、9月26日に来られ、「体がとてもらくになりました。頭痛も全くおこらず、頭痛薬は一度も飲まずにすみました。」と大変喜んでいただきました。

漢方がお役に立ててよかったです。

症例196に書いておりますが、五苓散は、「低気圧が近づくとひどくなる頭痛」によく使用しますが、本症例はこのような傾向はありませんでした。

頭痛については、症例513もご参照下さい。

460.不安で幼稚園に行けないの漢方治療

症例は6歳、女児です。
平成26年9月22日、「最近不安を訴えて、幼稚園に行きたがらない。」と、お母さんが連れてこられました。
あかちゃんの頃より、癇の強い子だったそうです。
どうしょうかと、悩みましたが、甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう;症例61、168、434参照)を、1日2回飲むように一ヶ月分処方したところ、10月24日にお母さんが来られ、「幼稚園に行けるようななりました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

甘麦大棗湯を構成している生薬は小麦、甘草、大棗の3種類と単純な組み合わせですが、強い不安感、極度の緊張、甚だしい緊張を取り除く強力な鎮静作用があります。

甘麦大棗湯の適応症は、ヒステリー・ノイローゼ・イライラ感・不安感・不眠・神経の興奮が甚だしい人・笑ったり、泣いたりして気分がコロコロ変わる人・諸痙攣症状がある人・幼児の夜啼きなどです。

461.生あくびの漢方治療

次の症例は64歳、女性です。
高血圧症、逆流性食道炎で当院へ通院されています。
身長151cm、体重57kg、BMI25.0。
平成26年10月3日来られた時に、「最近、生あくびばかり出ます。また、胃から胸にかけて、重い感じがします。最近ストレスが多いんです。」といわれました。
そこで、、甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう;症例61、168、434、460参照)と、茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう;症例50、402、432、440参照)を合わせて2週間分処方したところ、11月14日に来られ、「とてもよく効いて、生あくびはすぐ出なくなりました。胃から胸にかけての重い感じもとれて、とても体調がいいです。また同じ薬をください。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

甘麦大棗湯の使用目標として、よくあくびする人の、「夜泣き」・「ひきつけ」・「神経症」・「不眠症」などとありますが、本剤のあくびに対する効果は、動物実験で証明されております。

ラットにおける甘麦大棗湯のドパミン作動薬誘発あくび行動に対する抑制作用(木村 博) 抄録

甘麦大棗湯が、ラットにおけるあくび行動の発現に対し影響を与えるか否かについて検討を加えた。
ドパミンD-2受容体作動薬タリペキソール5〜100μg/kgを皮下投与して直後より1時間のあくび行動を観察したところ、25μg/kg投与群で最大のあくび行動の発現が見られた。
ついで甘麦大棗湯の25〜250mg/kgを経口摂取させ、その30分後にタリペキソールを最大効果が見られた用量で投与し、あくび行動誘発に対する効果を観察した。
タリペキソール誘発あくび行動の発現は、甘麦大棗湯の前投与により有意に抑制された。
この結果より、甘麦大棗湯は、中枢性ドパミン性神経促進に基づくあくび行動の誘発に対して抑制作用を有することが示された。

日本東洋醫學雜誌 48(1), 53-57, 1997-07-20

 

462.小児の喘息様発作の漢方治療

症例は4歳、女児です。
小児気管支喘息で、神秘湯(しんぴとう;症例74参照)小建中湯(しょうけんちゅうとう;症例26参照)を飲ませています。
平成26年10月17日、祖母が、「最近、夜8時ころになると決まって、喘息様の発作(ヒィーというひきつけるような呼吸)を起こし、一度救急車で総合病院小児科に行ったところ、先生に喘息ではないといわれました。」といわれました。
そこで、小建中湯を甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう;症例61、168、434、460、461参照)に変えてみたところ、11月28日に祖母が来られ、「あれ以来、発作は起こらなくなり、咳も全く出ていません。」といわれました。

症例460にも書いていますが、甘麦大棗湯は、強い不安感、甚だしい緊張を取り除く強力な鎮静作用があります。
また甘麦大棗湯の適応症は、ヒステリー・ノイローゼ・イライラ感・不安感・不眠・神経の興奮が甚だしい人・笑ったり、泣いたりして気分がコロコロ変わる人・諸痙攣症状がある人・幼児の夜啼きなどです。

漢方がお役に立ててよかったです。

463.逆流性食道炎の漢方治療(3)

症例176、201に続いて、逆流性食道炎の症例を載せます。
次の症例は67歳男性です。
平成26年6月頃より、胸やけ・呑酸・背中や肩、腕がひりひりと熱くなるなどの症状があり総合病院を受診したところ、逆流性食道炎の診断を受け、ラベラゾール(プロトンポンプ阻害薬;逆流内容の主なものである胃酸を抑えることによって胸やけなどの症状を抑え、食道炎を治癒させる)2錠を処方されましたが改善せず、その後リパクレオン(すい臓機能の悪化による消化不良を改善するために投与される薬)も追加されましたが全く症状は良くならなかったそうです。
そのため、主治医にいろいろと今の症状を告げると、いやな顔をされたそうです。
食欲がなく、体重も5kg減ってしまったそうです。
そこで当院のホームページをみて、姫路市より平成26年11月6日来院されました。
他の症状として、腹がはる・腹が鳴る・胃がもたれる・のどがつかえる・口内炎ができやすい・口の中が苦い・体がだるい・疲れやすい・耳鳴り・手足の冷え・不眠などの症状があります。
身長165cm、体重51kg、BMI18.7とやせを認めます。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう;症例50、402、432、440参照))コウジン末(症例449参照)を合わせてを1ヶ月分だしたところ、12月3日当院へ来られ、「とても調子よくなりました。私の笑顔を見てください。先生ありがとうございました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

茯苓飲について(井齋 偉矢先生)

逆流性食道炎とは胃十二指腸の内容が食道に逆流してQOLを低下させる疾患で、胸やけと胃酸の逆流が主症状です。
治療にはプロトンポンプ阻害薬(PPI)が第一選択で強いエビデンスを持っています。
確かにPPIによって食道炎は改善しますが、PPIは逆流性食道炎の根本的な病態である逆流を治すことはできません。
しかし、茯苓飲は食道と胃の蠕動運動を同時に改善させる働きを持っています。
特に食道の順蠕動を改善する薬剤は西洋薬にはありませんので、茯苓飲の価値は非常に大きいです。

 

464.口内炎、陰部潰瘍(ベーチット病類似)の漢方治療

次の症例は31歳女性です。
2年前ぐらいより、口内炎、陰部潰瘍が繰り返し起こり、また非常に治りにくいため総合病院を受診しましたが、「ベーチェット病ではない。」といわれました。
原因は不明で、フロモックス(抗生剤)、リンデロン(ステロイド)、ステリクロンW液(細菌などの細胞膜などに障害を与え、広範囲の微生物に抗菌作用などを示します。外陰・外性器の皮膚消毒、産婦人科・泌尿器科における外陰・外性器の皮膚消毒に使用します)、テラジアパスタ(細菌を殺菌する塗り薬。化膿性の皮膚病のほか、傷やヤケド、褥瘡(床ずれ)などに用いる)などを処方されましたが一向に改善しないため、当院通院中の方の紹介で、姫路市より平成26年3月6日来院されました。
他の症状として、口の中が苦い・薬で胃が荒れる・頭痛・肩こり・生理痛(子宮内膜炎あり)・膀胱炎が頻繁に起こる・冷えのぼせなどの症状があります。
身長158cm、体重58kg、BMI23.2。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
下田先生に教えていただいた通り、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう;症例467、586参照)加味逍遙散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、317、318、326、330、336、349、356、368、371、378、381、391、395、399、405、407、416、419、425、429、430、441、451参照)を合わせて処方したところ、5月2日来院され、「(口内炎、陰部潰瘍も)薬を飲んでいる時はよかったですが、切れるとまたでてきました。」といわれましたので続けていただいたところ、12月6日に来られた時には、「めったに出来なくなりましたし、出てもすぐ治ります。痛みもありません。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

ベーチット病については、こちらをクリック画像の説明ヤフーヘルスケア

竜胆瀉肝湯について(下田 憲先生)

ベーチェット病で 一番初めに書かれた薬は温清飲だと前に言いましたが、私は温清飲よりもむしろ竜胆瀉肝湯を使っている例が多いのです。
温清飲はどちらかといったら、アフタ等にはよく効くのですが、陰部の潰瘍にはあまり効かないのです。もちろん温清飲と併用するときもありますが。
でも竜胆瀉肝湯を現実に使うときは、上半身はのぼせて肩が凝って、非常に緊張感があって、それにいつも潰瘍があり、それとやっぱり慢性の膀胱炎を繰り返す方ですね。慢性の膀胱炎を繰り返すだけだった ら日本の竜胆瀉肝湯で十分なのです。柴胡は要らないですね。むしろ柴胡がない方がかえっていいかもしれません。柴胡があると上の方に効く部分が多くなり過ぎます。膀胱炎の症状に対して、なぜか解らないけれど、竜胆瀉肝湯が使われているうちに尿路疾患にしか使われなくなったのではないかと思います。それで柴胡がいつの間にか入らなくなったみたいです。慢性の尿路疾患のときはやはり柴胡が入っていない方がかえって切れ味がいいかもしれません。
(注:日本でエキス化されている竜胆瀉肝湯はどれも柴胡が入っていません。柴胡なしの竜胆瀉肝湯だと覚えていてください。中医学の本をご覧になったとき、中医学でいう竜胆瀉肝湯は柴胡が入っています。だから、かなり違う薬だというのをひとつ覚えておいてください。まず日本の竜胆瀉肝湯の考え方は、柴胡が入っていても入っていなくても目的とする部分はかなり似てはくるのです。)
ところがそういう、ベーチェット病等を始めとして、いわゆる肝火上炎と湿熱下注の両方が非常に強く出ているような状態のときは、何らかの柴胡剤と合わせた方がいいのです。
よく四逆散等と合わせることもありますし、抑肝散と合わせることもあります。加味帰脾湯や加味逍遙散と合わせることもあります。

 

465.朝、体がとてもだるくて重いの漢方治療

次の症例は48歳女性です。
2年くらい前より、「朝、体がとてもだるくて家事しづらい。」とのことで、平成26年5月16日、漢方治療を求めて姫路市より来院されました。
子供さんが2人おられ、毎日学校に送り出すのがとても大変だそうです。
20数年前より、安定剤を常用されており、現在は心療内科より、エビリファイ(既存の抗うつ薬の治療では、約1/3の患者さんで十分に効果が得られないといわれ、ドパミン系に作用する本剤を抗うつ薬へ上乗せして使用)・アキネトン(神経のはたらきを不活発にする アセチルコリンの作用を抑えて、神経のはたらきを活発にするアドレナリンとのバランスをとって筋肉の硬直、手指の震え、抑うつといった症状を改善する薬)・レキソタン(抗不安薬)・サインバルタ(SNRIと呼ばれる タイプの抗うつ剤)・セパゾン(抗不安薬)を処方されております。
他の症状として、口の中が苦い・頭痛・疲れやすい・食後眠くなる・上半身のしびれ・気分が沈むなどの症状があります。
身長159cm、体重75kg、BMI29.6と肥満を認めます。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう;症例15、166、267、285、328、370、407、410、413、425、442、449参照)を1ヶ月分処方したところ、6月11日に来られ、「朝、しっかりと起きれるようになり、体のだるさや重さも軽減し、しびれや頭痛もよくなりました。」といわれました。
そのまま調子がよいので、続けていただきましたが、10月10日に来られた時に、「また最近、朝起きずらくなりました。」といわれましたので、コウジン末(;症例449参照)を追加したところ、12月5日に来られ、「だんぜん、朝おきれるようになりました。調子良いので、パートの仕事にも行けるようになりました。」と、大変喜んでいただきました。

漢方がお役に立ててよかったです。

466.足の裏が熱いの漢方治療

次の症例は47歳女性です。
更年期障害のような症状の漢方治療を求めて、平成25年11月13日来院されました。
身長168cm、体重60kg、BMI21.2。
舌には大きな異常は認めませんでした。
症状は多彩で、腹がはる・胃がもたれる・のどが痞える(生理1週間前より、のどがはれて食事がとりにくい感じ)・口内炎ができやすい・足がむくむ・汗をかかない・頭痛・体がだるい・疲れやすい・食後眠くなる(自動車運転中も眠気来る)・のぼせやすい(とくに生理前)・耳鳴り・めまい・腰痛・動悸がする・寝つきが悪い・生理痛が強い・生理量が多い・青あざができやすいなどがあります。
加味逍遙散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、317、318、326、330、336、349、356、368、371、378、381、391、395、399、405、407、416、419、425、429、430、441、451、464参照)茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう;症例50、402、432、440、463参照))を合わせて処方したところ、半年ぐらいで腰痛と生理前に時々カァーと顔が熱くなる以外の症状は取れました。
しかし、平成26年8月5日に来られた時に、「足の裏が熱いです。」といわれましたので、八味地黄丸(はちみじおうがん;症例42、58参照)を寝る前に1包追加したところ、10月18日に来られた時に、「2週間ぐらいで症状が治まったので、今は飲んでません。」といわれました。しかし、冷えや腰痛があるようなので、しばらく続けて飲むよう指導させていただいたところ、12月8日に来られた時にには、「腰痛もとれました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

467.不眠症の漢方治療(竜胆瀉肝湯使用例)

次の症例は64歳男性です。
昨年夏頃より、不眠症がひどくなったそうです。
仕事が夜勤だったのが、退職してから不眠になったそうです。
寝つきが悪く、寝付いても一時間ぐらいですぐ目が覚め、起きた時にには興奮状態になるそうです。
西洋薬の睡眠薬では逆に興奮状態になるそうです。
漢方薬も加味逍遥散(かみしょうようさん)、抑肝散(よくかんさん)、加味帰脾湯(かみきひとう)などを試されたそうですが、全く効かなかったそうです。
平成26年5月26日漢方治療を求めて上郡町から来院されました。
他の症状として、便秘・腹がはる・のどが痞える・口内炎ができやすい・肩こり・じんましんができやすい・風邪が治りにくい・神経質でイライラする・手足の冷え・腰痛などの症状があります。
身長168cm、体重67kg、BMI23.7。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがしました。
不眠症によく用いる、柴胡加竜骨牡蛎湯・加味帰脾湯・黄連解毒湯・半夏厚朴湯・酸棗仁湯・甘麦大棗湯などを単独あるいは併用で試しましたが、ちょっとましか全くだめでした。
そんな時、患者さんがネットで調べ、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう;症例464、586参照)を試したいといわれました。
師匠の下田先生によると、「竜胆瀉肝湯は、四逆散と配すると肝胆道系への消炎作用、尿路の遷延性炎症への効、鎮静作用等増強される(症例464参照)。」といわれていますので、平成26年12月15日より、竜胆瀉肝湯と四逆散(しぎゃくさん;症例63参照)をあわせて処方したところ、平成27年1月9日に来られ、「よく効きました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

竜胆瀉肝湯について(下田 憲先生)

肝胆経に熱を持つと、肝火(かんか)上炎というか、肝陽上亢というか、肝気が上に上がってのぼせ感がでます。
肝陽上亢というのは、緊張感のあるような、肩こりなんかをともなって、ぐっと肩に力が入ったような感じで上がります。
それと同時になぜか、湿熱下注というのですが、下半身に何か嫌な感じの炎症があるのです。いろいろなパターンがあります。この竜胆瀉肝湯というのは、たいてい両方の特徴を持っています。

肝火と不眠

精神情緒をつかさどる五臓の「肝の気」の流れが精神的ストレス、緊張、怒り、ゆううつ感情などで鬱滞して熱を帯びて肝火となり、不眠が生じています。
多くの場合、イライラして寝つけません。この場合は肝気の流れをよくして肝火を鎮める漢方薬を使います。代表的な処方は竜胆瀉肝湯です。

 

468.鼠径部の痛み(寒疝と称される病)の漢方治療

次の症例は31歳女性です。
以前より冷え症があるそうです。
約4ヶ月前より、両足の付け根が痛むようになりました。
平成26年12月16日漢方治療を求めてたつの市から来院されました。
この方の舌を見ると、紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、「瘀血」(おけつ)体質がはっきりとしておりました。
身長158cm、体重45kg、BMI18とやせを認めます。
他の症状として、胸やけ・足がむくむ・汗をかかない・頭痛・肩こり・体がだるい(特に生理中足がだるくなる)・疲れやすい・手足の冷え・腰痛・生理痛が強い・青あざができやすいなどがあります。
「瘀血」に使う桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん;症例67参照)と症状が寒冷刺激で増悪するため、寒疝(かんせん)と考えて当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう;症例92参照)に強壮・強精作用のあるコウジン末(;症例449参照)を合わせて一ヶ月分処方したところ、平成27年1月16日に来られ、「飲みだして、2、3日してすぐに体がポカポカしてきました。足の付け根の痛みも、よほど寒い日でない限り痛まなくなりました。」といわれました。
私が、「頭痛はどうですか。」と尋ねると、「そういえば、この一ヶ月間、一度も痛まなかったです。」といわれました。
また腰痛もすごく軽くなったそうです。

漢方がお役に立ててよかったです。

寒疝については、大塚敬節先生が「疝気症候群A型」としてその概念、臨床像を詳細に報告されています。

疝気症候群A型

  • 手足の寒冷を訴え、甚だしいものは、肩から足にまで水が流れるようだと訴える。
  • 慢性に経過する下腹部痛があり、それが腰痛、四肢痛まで及び、時には背痛、
    頭痛を訴えるものがある。
  • 疼痛の本態を近代医学的検索によって明確にしがたいことが多い。神経性のも
    のと診断される傾向がある。
  • 肝経の変動によって起こると考えられる症状が多く、特に生殖器、泌尿器からの障害が多く、尿が漏れる。または、夜間の失禁、性交不快のため性交を嫌悪する。
  • 開腹手術、特に子宮筋腫や卵巣嚢腫の手術、妊娠中絶、帝王切開、下腹や腰部の外傷などの既往症のあるものが圧倒的に多い。
  • 当帰四逆加呉茱萸生姜湯の服用2 〜3 週間で著効が現れる。
  • 婦人に多く男性にまれである。

 

469.起立性調節障害の漢方治療(2)

症例363に続いて、起立性調節障害の症例を載せます。
症例は14歳男性です。
平成24年11月頃より朝に起きられない・立ちくらみ・全身倦怠感・立っていると気分が悪くなる・失神発作・動悸・頭痛・夜になかなか寝つけない・イライラ感・集中力低下などの種々の体調不良があり、平成25年5月近くの総合病院小児科を受診したところ、起立性調節障害と診断されました。一か月間ほどメトリジン(血管にある交感神経を刺激し、血管を収縮させて血圧を上げる)を服用しましたが、全く改善しませんでした。
頭痛・吐き気がとくにひどいため、ブルフェン(消炎鎮痛薬)・ナウゼリン(吐き気止め)そして、漢方の呉茱萸湯(ごしゅゆとう)も処方されましたが、状態が改善しないため心療内科へ紹介されたそうです。
そこで、レクサプロ(抗うつ薬のSSRI;選択的セロトニン再取り込み阻害薬)・ソレントミン(自律神経からの余剰刺激を遮断して催眠、抗不安、鎮静作用を現す。不眠症の治療薬)を処方されましたが、飲むとよけいに調子悪くなったそうです。
困っていたところ、ホームページで当院を知り、平成26年5月23日に姫路市から当院を受診されました。
その他の症状も多彩で、下痢・げっぷ・みぞおちが痞える・肩こり・鼻水・鼻づまり・体がだるい・疲れやすい・食後眠くなる・息切れ・耳鳴り・めまい・目が疲れる・手足の冷え・いやな夢を見る・眠りが浅いなどがあります。
身長170cm、体重72kg、BMI24.9。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう;症例51参照)苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう;症例20参照)を合わせて一ヶ月分処方したところ、平成26年6月19日に来られ、「立ちくらみがましになり、頭痛はなくなりました。吐き気は朝方だけあります。」といわれました。7月12日には、「気分的に状態が上がり、朝はまだ起きるのがたいへんですが、学校に行けるようになっています。」といわれました。しかし、8月23日に来られた時には、「朝がまた時々起きにくいです。」といわれましたので、強壮・強精作用のあるコウジン末(;症例449参照)を追加したところ、11月22日には、「たまに週末に疲かれるぐらいです。立っていると気分が悪くなり倒れることもなくなりました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

470.足裏・首・背中・腰のほてりの漢方治療

次の症例は47歳女性です。
平成26年9月下旬から、足裏・首・背中・腰のほてりが出現したため、平成26年11月12日に神崎郡神河町から当院を受診されました。
その他の症状として、胃がもたれる・のどが痞える・口の中が苦い・食欲がなく体重が5kg減った・汗をかかない・肩こり・体がだるい・疲れやすい・食後眠くなる・イライラする・耳鳴り(右)・手足の冷え・腰痛・寝つきが悪い・夜中に目が覚める・眠りが浅い・頻尿などがあります。
身長150cm、体重47.5kg、BMI21.1。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
腹診では下腹部が軟弱無力で、圧迫すると腹壁は容易に陥没し、押さえる指が腹壁に入るような状態(小腹不仁(しょうふくふじん))を認め、腎虚(腎虚については症例58、128、161、194、216参照)と考えられました。
六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318、350、352、354、365、391、411、419、430、441、447、450、452、459参照)八味地黄丸(はちみじおうがん;症例42、58参照)を合わせて処方したところ、平成27年1月8日に来られ、「ほてりは軽減し、食欲も増し、体力もあがりました。耳鳴りも軽減し、とても調子よくなりました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

471.口が苦いの漢方治療

次の症例は72歳女性です。
以前より高血圧症で当院通院中の患者さんです。
平成26年10月14日に来られた時に、「口が苦い、のどが詰まる、気分が沈みます。」といわれました。
実は、10月3日に来られた時に、「娘さんが、遠い北海道へ嫁に行くことになり、それが心配で、すごくストレスなんです。」といわれていました。
舌には、白い苔がついておりました。
小柴胡湯半夏厚朴湯とを合わせた、柴朴湯(さいぼくとう;症例73参照)を処方したところ、11月7日に来られた時には、「少しましになってきました。」といわれました。さらに続けていくと、12月5日に来られた時には、「口の苦みはとれ、便が出やすくなり、とても気持ちが落ち着いてきました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

柴胡剤について(佐藤弘先生)

柴胡はセリ科の植物で、根を薬として用います。
神農本草経では上薬として記載されています。
ここには、「胸やお腹、胃腸の中に病的な気が集まり、飲食が停滞したり、発熱したりするのを治す。そして新陳代謝をおこなう。長く服用すると体が軽くなり、目がはっきりし、元気がでる」とあります。柴胡は胸脇苦満といって肋骨の一番下の辺が重苦しい、あるいはそこの部分を触ると少し抵抗があり、押すと苦しい感じを覚える事を最も重要な目標として使用します。
また熱感と悪寒が交互にあらわれる型の発熱を往来寒熱と呼びますが、これも大事な目標です。昔はマラリア類似の病気にも用いられました。
口が苦いという場合もこの柴胡がよく用いられます。
柴胡を含む処方を柴胡剤と呼んでいますが、代表格が小柴胡湯なのです。この薬は慢性肝炎の治療薬として脚光を浴び、いわばわが国における漢方発展の牽引車として大きな役割を果たしてきたのです。しかし小柴胡湯によるとされる間質性肺炎で死亡例が報告されて以来、なかなか使用しずらくなりました。この小柴胡湯は、カゼが長引き、食欲がなくなり、 口が苦くなったり、味が分からなくなったときに使用するとよく効くのです。またいわゆる体質改善が必要な病気や近代医学でも治療に難渋する病気にも有効な場合が少なくありません。 柴胡剤には小柴胡湯以外にもいくつかあり、体格や特徴的な症状を目標にして、使い分けていきます。

 

472.痰がのどにへばりつき切れないの漢方治療

次の症例は42歳、男性です。
痰(透明)がのどにへばりつき切れにくく、窒息感があるため夜眠れず、耳鼻科を受診したところ、「全く異常なし。」といわれたそです。
改善しないため、平成27年1月20日に当院を受診されました。
身長174cm、体重66kg、BMI21.8。
他の症状として、食欲不振・残尿感・しもやけなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう;症例50、402、432、440、461参照)を一か月分処方したところ、2月25日に来られ、「薬を飲みだしてから、1日も意識することなく、よく寝れるようになりました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

473.起立性調節障害の漢方治療(3)

症例363、469に続いて、起立性調節障害の症例を載せます。
症例は13歳男性です。
平成26年9月頃より起床時のめまい・ふらふらがあり、姫路市の総合病院小児科を受診したところ、起立性調節障害と診断されました。一ヶ月間ほどメトリジン(血管にある交感神経を刺激し、血管を収縮させて血圧を上げる)を服用しましたが、全く改善しませんでした。
1週間に2、3回しか学校に行けないそうです。
知人の紹介で、平成26年11月25日にたつの市から当院を受診されました。
その他の症状として汗をかきやすい・体がだるい・疲れやすいなどがあります。
身長156cm、体重62kg、BMI25.5。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
小さい時によく鼻血を出していたとのことでしたので、小建中湯(しょうけんちゅうとう);症例26参照)苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう;症例20参照)、強壮・強精作用のあるコウジン末(;症例449参照)を合わせて一ヶ月分処方したところ、平成26年12月26日に来られ、お母さんが、「朝すっと起きれている感じです。」といわれました。平成27年3月3日には、「2月頃より、体のしんどさがすっかりとれ、朝すっきりと起きれます。毎日学校にも行けています。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

474.めまいの漢方治療

次の症例は70歳女性です。
今まで何度かめまい、嘔吐で入院されたことがあります(いつも原因不明といわれるそうです。アデホスというめまいの薬を飲んでおられますが、あまり効かないそうです)。
今回、3週間前よりめまい、嘔吐がするため、平成27年1月7日に佐用郡佐用町から漢方治療を求めて当院を受診されました。
身長153cm、体重49kg、BMI20.9。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
また地図状舌も認めました。
その他の症状も多彩で、吐き気・胃もたれ・胸やけ・腹がはる・のどが痞える・食欲不振・尿が出にくい・汗をかきやすい・口内炎ができやすい・口が渇く・頭痛・体がだるい・疲れやすい・六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318、350、352、354、365、391、411、419、430、441、447、450、452、459、470参照)とめまいによく使う、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう;症例20参照)を合わせて一ヶ月分処方したところ、1月30日に来られ、「やはり、めまいがします。」といわれました。話をよく効くと、「疲れた時によく出るし、口がとてもよく乾きます。」といわれましたので、五苓散の効くめまいだとようやく気づきました。
五苓散は、気圧低下に伴う頭痛(症例174)のほかに、脳浮腫、慢性硬膜下血腫、ロタウイルスなどによる感染性胃腸炎(症例3)、航空性中耳炎(症例196)、二日酔など、多くの疾患に有効ですが、口が渇き尿の出が悪いタイプのむくみ、下痢、頭痛、発熱、めまい、咳などに使用します。
苓桂朮甘湯を五苓散(ごれいさん;症例3、22、120、174、196、215参照)に変えたところ、3月24日に来られ、「めまいが全くしなくなりました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

475.西洋薬では改善しなかった胃痛・下痢の漢方治療

次の症例は32歳男性です。
うつ病、不眠症で心療内科にかかり、リフレックス(うつ病の薬)・ルネスタ(睡眠薬)・イリボー(過敏性腸症候群の薬)が処方されておりますが、体がだるく、疲れやすく、眠りも浅く、下痢しやすくて胃がもたれ、胃痛(特に朝方)がひどいため漢方治療を求めて、平成27年3月9日に来院されました。
身長172cm、体重70kg、BMI23.7。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
腹診で、みぞおちが硬くなっており(心下痞硬という)、胸脇苦満(=胸から脇(季肋下)にかけて充満した状態があり、押さえると抵抗と圧痛を訴える状態)と腹直筋攣急もあり、腹に2本の棒を立てたように触れました。
四逆散(しぎゃくさん;症例63参照)と、啓脾湯(けいひとう;症例240、364、398、401、454参照)を合わせて一ヶ月分処方したところ、4月4日に来られ、「おなかがの調子がとてもよくなりました。胃も痛みませんし、下痢も止まりました。」といわれました。
しばらく続けていく予定です。

漢方がお役に立ててよかったです。

476.九味檳榔湯(くみびんろうとう)による湿疹の漢方治療

一年中、手足に湿疹が出現(かゆみが強いそうです)し、特に体が疲れたら悪化するそうです。
皮膚科ではステロイドの軟膏が処方されるそうですが、治ることはなかったそうです。
平成26年7月4日に赤穂市から漢方治療を求めて当院を受診されました。
身長155cm、体重46kg、BMI19.1とやせを認めます。
他の症状として、便秘・快便感がない・口内炎ができやすい・足がむくむ・頭痛・肩こり・食後眠くなるなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
便秘・快便感がない・足がむくむ・頭痛・肩こりなどの症状より九味檳榔湯(くみびんろうとう;症例150、345、346、348、349、406、422参照)と気虚の代表的な薬である補中益気湯(ほちゅうえっきとう;症例15、166、267、285、328、370、407、410、413、425、442、449、465参照)を合わせて1ヶ月分処方しました。しかし、その後来院はありませんでした。
成27年4月8日に再度、同様の症状を訴え来院されました。
その時に話を聞くと、前回とても薬がよく効き、湿疹も治り、体調も大変良くなったため薬をやめていたそうです。そこで前回と全く同じ処方をださせていただきました。

症例345に書いていますが、九味檳榔湯は、精神的ストレスにより悪化する、慢性痒疹、皮膚瘙痒症、慢性じんましんによいとされています。

漢方がお役に立ててよかったです。

477.中学生の生理前のイライラの漢方治療

次の症例は13歳女児です。
小学科校4年から生理が始まったそうです。
いつも生理前になるとイライラし、生理の終わりころには生理痛がひどいそうです。
平成27年4月3日に赤穂市から漢方治療を求めて当院を受診されました。
身長156cm、体重54kg、BMI22.2。
他の症状として、汗をかきやすい・風邪が治りにくい・疲れやすい・生理がだらだら出血する(症例391参照)などがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318、350、352、354、365、391、411、419、430、441、447、450、452、459、470、474参照)加味逍遙散(かみしょうようさん;症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、317、318、326、330、336、349、356、368、371、378、381、391、395、399、405、407、416、419、425、429、430、441、451、464、466参照)を合わせて一ヶ月分処方したところ、5月11日に来られ、「イライラしなくなりました。生理痛も楽で、とても調子いいです。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

月経前症候群(PMS)については、症例143、388等をご参照ください。

478.月経前の頭痛の漢方治療

次の症例は42歳女性です。
平成25年から、主婦湿疹、冷え症等で漢方治療している方です。
身長154cm、体重48kg、BMI20.2。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
最終的に六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318、350、352、354、365、391、411、419、430、441、447、450、452、459、470、474、477参照)当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう;症例92参照)で、体調はとてもよくなられていましたが、平成27年4月20日に来られた時に、「生理前だけ、頭痛が続くんです。」といわれましたので、上記2種の漢方薬と、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう;症例20参照)を1週間分渡したところ、5月20日に来られた時に、「頭痛にとてもよく効いて、楽でした。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

月経前の頭痛について(井齋 偉矢先生)

苓桂朮甘湯は、月経前症候群の第一選択薬で、月経がはじまる約1週間前から服用を始め、月経がはじまって症状が消失したら服用を中止する。月経前症候群に頭痛を合併する症例には効果があるが、それ以外の頭痛にはあまり効果がない。
漢方医薬雑誌2015 Vol22 No4 (138)

 

479.子供のかんしゃくの漢方治療

次の症例は3歳6ヶ月女児です。
「かんしゃくが最近ひどくなった。」お母さんが、平成27年3月30日に姫路市から漢方治療を求めて当院へ連れて来られました。
身長92cm、体重15kg。
また喘息の持病があり、夜間咳が続いていたそうです。
また、眠りも浅いようで、よく夜間に起きだしてきたそうです。
顔をみると、眉間や鼻の横あたりにに青筋(症例144参照)が立っていました。
抑肝散(よくかんさん;症例24、25、144参照)1包を朝晩に2回に分けて飲んでいただきました。また、喘息に対しては、神秘湯(しんぴとう;症例74、172、446)を一ヶ月分処方したところ、4月22日に来られた時には、お母さんが、「とてもおだやかになりました。」といわれました。また、喘息も全く発作が出なくなったそうです。

漢方がお役に立ててよかったです。

480.六君子湯と葛根加朮附湯による花粉症(アレルギー性鼻炎)の漢方治療

症例181に記載しましたが、私自身花粉症があり、それが八味地黄丸(はちみじおうがん;症例42、58、161参照)により、症状がでなくなりました(ピーク時でもマスクをせずに自転車に乗れます)。
今回、症例310の方が、平成25年8月2日より六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318、350、352、354、365、391、411、419、430、441、447、450、452、459、470、474、477、478参照)と肩こりの葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう;症例12参照)を続けられておりますが、体調はとてもよく、そればかりか平成27年3月7日に来られた時に、「今年の春は、ほとんど症状が出ません。とても楽です。」といわれました。
昨年の春と秋までは、アレグラを処方しておりましたが、今回は全く必要ありませんでした。
どちらがよかったのかはわかりません(おそらく六君子湯だろうと考えます)が、漢方がお役に立ててよかったです。

六君子湯と花粉症については、こちらをクリック画像の説明美的漢方Life

481.おねしょの漢方治療

症例285に続いておねしょの症例です。
症例は7歳5ヶ月、男児です。
ほとんど毎日おねしょをするため、平成27年3月25日漢方治療を求めて太子町から来院されました。
身長110cm(標準より12cmほど低い)、体重20kg。
他の症状として、幼稚園の頃より、副鼻腔炎と鼻炎があるそうです。
また、手足の冷えもあり、お母さんによると、「冷えておねしょをしている感じです。夏場は少しおねしょの回数も減ります。」といわれました。
この方の舌は異常ありませんでした。苓姜朮甘湯(りょう きょうじゅつかんとう;症例41参照) 辛夷清肺湯 ( しんいせいは いとう;症例52、435参照 )を合わせて一ヶ月分処方しました。 一ヶ月後の4月25日に来られた時には、お母さんが、「おねしょが月に6回くらいに減りました。ただ鼻の症状は変わりません。」と、いわれましたので、辛夷清肺湯を葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)に変えてみました。一ヶ月後の5月22日に来られた時には、お母さんが、「おねしょは、5月3日の1日だけでした。鼻症状は、朝方に鼻水・くしゃみが出ます。」といわれましたので、葛根湯加川芎辛夷を麻黄附子細辛湯( まおうぶしさいしんとう;症例49参照)に変えたところ、6月20日に来られた時には、「一度もおねしょはありませんでした。本人も自信ができたのか、おばあちゃんのところへお泊りにも行きました。鼻症状もだいぶよくなりました。」と、大変喜んでいただきました。

苓姜朮甘湯は、手足や腰が冷えるタイプのおねしょによく使います。

漢方がお役に立ててよかったです。

子供の夜尿症についてについては、こちらをクリック画像の説明おしっこトラブルどっとこむ

 

482.にきびの漢方治療

次の症例は24歳女性です。
にきびが7年半くらいなおらないと、平成25年9月25日にたつの市から漢方治療を求めて当院を受診されました。
薬は市販のタケダ ストレージタイプSA(清上防風湯;症例336参照)を飲んだそうですが、効かなかったそうです。
身長160cm、体重48kg、BMI18.8とやせを認めます。
他の症状として、便秘・快便感がない・腹がはる・口内炎ができやすい・足がむくむ・肩こり・汗をかかない・体がだるい・疲れやすい・イライラする・立ちくらみ・手足は冷えるがのぼせる・腰痛・気分が沈む・寝つきが悪い・夜中に目がさめる・生理痛がひどいなどがあります。
この方の舌を見ると、舌先が紅くなっていました(舌尖紅潮;症例72、141も参照)。また、舌の色が紫がかり、舌の裏側の静脈が怒張し、枝分かれして、「瘀血」(おけつ)体質と診断いたしました。
しかし、その後来院はありませんでした。

久しぶりに、平成27年6月15日に来られた時に話を聞くと、あの後、すごく体調がよくなり、にきびも治り、すぐに2人目を妊娠されたそうです。加味逍遥散(かみしょうようさん);症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、317、318、326、330、336、349、356、368、371、378、381、391、395、399、405、407、416、419、425、429、430、441、451、464、466、477参照)と、十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう;症例107、165、305、306、336、337、392参照)を合わせて一ヶ月分処方しました。

そして、無事出産も終わり、また生理が始まりだしたころから、にきびも出来て、最初と全く同じような症状になったため、また薬を取りに来られたそうです。

漢方がお役に立ててよかったです。

483.背中・胸の痛みの漢方治療

次の症例は50歳女性です。
平成26年12月頃より背中・胸の痛みが起こるようになり、近医を受診したところ、特に病気はなく、「神経痛ではないか。」といわれ、ロキソニン(消炎鎮痛剤)とメチコバール(ビタミンB12製剤。末梢神経の炎症及び麻痺などの治療に用いる)を処方されましたが、改善しないばかりではなく、胃が調子悪くなったそうです。
風呂で温めると痛みは和らぐそうです。
平成27年4月22日に漢方治療を求めて当院を受診されました。
身長157cm、体重43kg、BMI17.4とやせを認めます。
舌は大きな異常を認めませんでした。
他の症状として、吐き気・薬で胃が荒れやすい・めまい・手足が冷える・手足のしびれ・夜中に目がさめる・いやな夢をみる・眠りが浅いなどがあります。
当帰湯(とうきとう;症例5、71、122、255、408参照)と体を温めるブシ末を併用して処方したところ5月19日に来られ、「連休明けごろより、だいぶ痛みが楽になってきました。」といわれました。
不眠は続くようなので、同じ処方に抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ;症例19、126、404参照)を眠前に追加したところ、6月16日に来られ、「ほとんど痛まなくなり、夜もよく寝れるようになりました。」といわれました。
この方はその後も漢方薬を続けられ、平成29年5月22日に来られた時には、「今まで真夏でも汗が出ませんでしたが、今年は普通に汗が出るようになりました。」と大変喜んでいただきました。

漢方がお役に立ててよかったです。

484.起立性調節障害の漢方治療(4)

症例363、469、473に続いて、起立性調節障害の症例を載せます。(起立性調節障害については、こちらをクリック画像の説明起立性調節障害support group
症例は13歳男性です。
朝から午後2時頃まで体調が悪く(動悸・めまい・寒気がひどい)学校へ行けなくなったため、総合病院小児科を受診したところ、起立性調節障害+片頭痛と診断されました。一か月間ほどメトリジン(血管にある交感神経を刺激し、血管を収縮させて血圧を上げる)を服用しましたが、全く改善しませんでした。
そこで、お母さんが市販の苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう;症例20参照)を買って飲ませたところよさそうなので、平成27年3月24日に漢方治療を求めて上郡町から当院を受診されました。
身長168cm、体重55kg、BMI19.5とやせを認めます。
症状は多彩で、腹が鳴る・口内炎ができやすい・肩こり・汗をかきやすい・のどがかわく・頭痛・体がだるい・疲れやすい・風邪が治りにくい・のぼせやすい・耳鳴り・立ちくらみ・手足の冷えなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう;症例20参照)柴胡桂枝湯(さいこけいしとう;症例39、66、152、155、363、432参照)を合わせて一ヶ月分処方したところ、3月31日に来られ、「頭痛がします。総合病院小児科では片頭痛といわれました。」といわれましたので、頭痛薬として頓服でSG顆粒を処方しました。4月21日には、「遅刻しながらも、学校へ行けるようになってきました。頭痛、肩こりは続きます。」といわれましたので、処方を半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう;症例51参照)葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう;症例12参照)に変え、強壮・強精作用のあるコウジン末(;症例449参照)を追加させいただいたところ、6月27日にお母さんが来られ、「学校にも毎日行けるようになり、部活も毎日に参加できています。」といわれましたので、治療を終えさせていただきました。
しかし、平成28年1月16日に再び来院され、「2学期は本当に調子よかったのですが、年明けからまためまいがします。」といわれましたので、今度は半夏白朮天麻湯と苓桂朮甘湯をお渡しいました。

漢方がお役に立ててよかったです。

485.動悸(心臓がバクバクする)の漢方治療

次の症例は65歳女性です。
平成23年10月19日より、アトピー性皮膚炎(カサカサタイプで春と秋に悪化する)で通院中の患者さんです。
黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん;症例14、158、241、249、254、265、330、338、339、387、400、401、423、452症例)を飲まれています。
平成27年5月20日に来られた時に、「動悸(心臓がバクバクする)がするため、糖尿病、高血圧症、脂質異常症で通院中の内科で相談したところ、心エコー・心電図に異常がないため、心配しなくてもよい。」といわれたそうです。
しかし、症状が続くため、「漢方でなんとかならないか。」と相談を受けました。
当帰芍薬散を甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう;症例61、168、434、460、461、462参照)に変えてみたところ、6月22日に来られ、「あれ以来、すぐに動悸は起こらなくなりました。またカチンカチンといらついていたのもおさまりました。」といわれました。

症例460にも書いていますが、甘麦大棗湯は、強い不安感、極度の緊張を取り除く強力な鎮静作用があります。
もし、本剤だけで改善しなければ、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう;症例20参照)を合わせます。
漢方では、神経質な人の発作性の動悸は胃の中に余分な水分が停滞し、そのため気(精神興奮)が上半身に上がって全身にめぐらず、それに対抗して心臓が激しく動くと考え、まず苓桂甘棗湯(りょうけいかんそうとう)を処方します。
動悸時の応急薬としてばかりでなく、連用することにより発作の再発を予防します。
残念ながら現在のところ保険適応のエキス剤がありませんので、苓桂朮甘湯と甘麦大棗湯とを合方したもので代用できます。

漢方がお役に立ててよかったです。

486.背中のにきびの漢方治療

次の症例は38歳男性です。
30歳頃より、アレルギー性鼻炎とともに、背中のにきびや顔の脂っぽさがきになるようになりました。
これらを改善したいと、平成27年6月6日に漢方治療を求めて姫路市より当院を受診されました。
身長165cm、体重55kg、BMI20.2。
他の症状も多彩で、下痢しやすい・快便感がない・胸やみぞおちが痞える・口内炎ができやすい・薬で胃が荒れやすい・肩こり・汗をかかない・頭痛・くしゃみ・鼻水・体がだるい・疲れやすい・食後眠くなる・イライラする・息が吸いにくい・気分が沈む・寝つきが悪い・夜中に目がさめる・眠りが浅いなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318、350、352、354、365、391、411、419、430、441、447、450、452、459、470、474、477、478,480参照)と小さいころよく扁桃腺をはらしていたそうなので、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう;症例27、55参照)を合わせて一ヶ月分処方したところ、7月4日に来られ、「にきびが薄くなってきました。体調もいいです。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

487.通年性アレルギー性鼻炎の漢方治療

次の症例は31歳女性です。
5、6年前、子供を出産された頃より体質が変わったようで、春に鼻炎症状(鼻汁<鼻閉)が出るようになったそうです。
昨年は、今まで症状のなかった秋にも(11月から)鼻炎症状が続くため、平成27年1月26日に漢方治療を求めて赤穂市より当院を受診されました。
現在、近医でシングレア(選択的にロイコトリエン受容体に拮抗し、抗炎症作用・気管支収縮抑制作用を示す。気道過敏性の亢進が抑制し、喘息発作が起こりにくい状態になる。同様に、鼻粘膜においても抗炎症作用、過敏性抑制作用を発揮し、くしゃみや鼻水、鼻づまりを改善する)とエバステル(花粉症に対しての効能効果を持つ抗アレルギー薬)をもらっていますが、全く効かないそうです。
身長161cm、体重58kg、BMI22.4。
副鼻腔炎をよく起こし、子供の時には中耳炎にもよくなっていたという話より、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう;症例27、55参照)をメインに、症状がひどかったので麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう;症例73、105参照)を合わせて一ヶ月分処方したところ、2月23日に来られ、「何とか漢方だけで乗り切れそうです。」といわれました。
4月6日に来られた時には、「とてもよいです。本当に楽です。」大変喜んでいただきました。
5月18日に来られた時には、「いつもは、一番症状のひどい時なのに、いい感じです。調子いいです。」といわれました。
ただ7月13日に来られた時には、冷えがあるようで、「特に夏に冷房が入ると、冷えて下肢がむくむんです。」といわれましたので、冷やす麻杏甘石湯を中止し、冷房病にも使う五積散(ごしゃくさん)変えさせていただきました。

漢方がお役に立ててよかったです。

488.口の中に唾がたまるの漢方治療

次の症例は27歳女性です。
一ヶ月ぐらい前より、食欲不振、下痢、動悸などがあるため、平成27年6月1日に漢方治療を求めて姫路市より当院を受診されました。
身長156cm、体重44kg、BMI18.1とやせを認めます。
他の症状も多彩で、快便感がない・腹がはる・腹が鳴る・のどが痞える・頻尿・口が渇く・体がだるい・疲れやすい・食後眠くなる・イライラする・手足のしびれ・気分が沈む・生理が定期的に来ない・生理痛などがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318、350、352、354、365、391、411、419、430、441、447、450、452、459、470、474、477、478,480参照)当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん;症例14、158、241、249、254、265、330、338、339、387、400、401、423、452症例)に強壮・強精作用のあるコウジン末(;症例449参照)を合わせて一ヶ月分処方したところ、すぐ6月6日に来られ、「飲む前より、調子悪い。下痢がひどく、動悸・不安感も強い。」といわれましたので、桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう;症例57、224、286、451参照)を寝る前に追加させていただきました。
しかし、下痢や軟便が続き、唾が口の中ににたまり、お腹が冷えるため、近くの内科を受診したところ、「唾が口の中ににたまるという、そんな病気はない。」といわれ、セレキノン(ストレスによって繰り返す下痢や便秘といった過敏性腸症候群の再発症状改善薬)だけを2週間分処方されましたが、全く改善されなかったそうです。
6月24日に来られた時にその話をされましたので、「漢方では有名な症状ですよ。」と話させていただきました(喜唾;症例110参照)。
六君子湯を人参湯へ変え、コウジン末を体を温めるブシ末に変えて、一ヶ月分処方したところ7月11日に来られ、「唾が口の中ににたまるのはすぐよくなりました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

489.イライラして弟に当たり散らすの漢方治療

症例は10歳女児です。
便秘・肥満症があり、近医で防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん;症例18、221参照)をもらっているそうです。
「イライラがひどく、弟に当たり散らすのをなんとかしてほしい。」と、平成27年6月26日に漢方治療を求めて姫路市より当院を受診されました。
身長138cm、体重52.4kg、BMI27.5と肥満を認めます。
他の症状として、腹痛・汗をかきやすい・肩こり・にきび・かぜが治りにくい・疲れやすいなどがあります。
舌や腹診では特に異常は認めませんでした。
みけんに青筋がくっきりと立っていました。
抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ;症例19、34、126、368参照)六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318、350、352、354、365、391、411、419、430、441、447、450、452、459、470、474、477、478,480、488参照)、便秘には麻子仁丸(ましにんがん;症例77、116参照)を眠前に1包を合わせて一ヶ月分処方したところ、7月23日に来られ、「キーキーカーカーがなくなり、弟に当たり散らすのがなくなりました。」と、お母さんがいわれました。
また、麻子仁丸はほとんど飲まなくても便が出るようになったそうです。
本人に「何か困ることはないか。」と尋ねると、「漢方がまずいくらいかな。」と答えました。
11月9日に来られた時には、「調子いいです。かぜも引かなくなりました。」といわれました。
12月12日に来られた時には、「よく体育を休んでいましたが、それもなくなりました。小さい時急性股関節炎を起こしてから、毎年冬になると痛んでいたのが、今年は痛みません。」といわれました。
平成28年1月9日には、「学校も休まずいけてます。」といわれました。
2月6日には、「弟にもあたっていません。体重が増えなくなり、今年初めて学校健診で、肥満でひっかかりませんでした。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

同じような症例を症例138、243にも載せております。

490.おねしょの漢方治療

症例285、481に続いておねしょの症例です。
症例は11歳、男児です。
ほとんど毎日おねしょをするため、小学校2年生の時に泌尿器科を受診したところ、「心配ない。そのうち治るだろう。」といわれ、薬はもらえなかったそうです。その後もおねしょは続き、ほぼ1日おきにあるため、平成27年7月21日漢方治療を求めて来院されました。
身長135.5cm、体重28kg。
他の症状として、鼻炎があるそうです。
この方の舌は異常ありませんでした。 腹診では腹直筋緊張(;症例279参照)を認めました。唇はカサカサしていました。
小建中湯(しょうけんちゅうとう;症例29参照)を一ヶ月分処方しました。
8月21日に来られた時には、お母さんが、「おねしょが月に5回くらいに激減しました。」といわれました。
次に9月16日に来られた時には、お母さんが、「この1ヶ月一度も失敗しませんでした。9月29日から自然学校が始まりますので、本当に間に合ってよかったです。また、いままでよく爪噛みをしていましたが、それも治りました。」といわれました。
10月23日に来られた時には、「自然学校中も含めて一度も失敗しませんでした。」と大変喜んでいただきました。
12月19日に来られた時、お母さんが、「2学期はかぜを一度も引かず、一日も休まずに学校へ行けました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

491.舌がピリピリする(舌痛症)の漢方治療

次の症例は36歳女性です。
平成26年の年末より、舌がピリピリするため、歯科を受診したところ、「歯をくいしばっているからだろう。」といわれたそうです。
痛みが続くため、平成27年2月10日に漢方治療を求めて太子町より当院を受診されました。
身長160cm、体重46kg、BMI18.0とやせを認めます。
他の症状も多彩で、便秘(週に1回しか排便なし)・胃がもたれる・胸やけ・口内炎ができやすい・薬で胃が荒れやすい・足がむくむ・口が渇く・肩こり・頭痛・立ちくらみ・手足の冷え・生理量が多い・生理がだらだら続く・生理痛・痔出血などがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。また紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、「瘀血」(おけつ)体質もはっきりとしておりました。
六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318、350、352、354、365、391、411、419、430、441、447、450、452、459、470、474、477、478、480、488参照)加味逍遥散(かみしょうようさん);症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、317、318、326、330、336、349、356、368、371、378、381、391、395、399、405、407、416、419、425、429、430、441、451、464、466、477参照)を合わせて一ヶ月分処方しところ、3月10日に来られ、「舌の痛みはましです。便秘もよくなりました。」といわれました。
4月7日に来られた時には、「生理の量はまだ多いですが、日数は10日以内になりました。生理痛もなくなりました。」
5月14日に来られた時には、「おなかがすくようになってきました。しかし、まだ体重は増えません。」
8月24日に来られた時には、「毎日便はあります。胃の調子もいいですが、やはり体重は増えません。舌の痛みは月に2、3回少しピリピリする程度です。」といわれました。

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492.不安感が強くて夜眠れないの漢方治療

次の症例は41歳女性です。
1年位前より、”不安感が強くて夜眠れない”ため、心療内科受診し、ジェイゾロフト(SSRIと呼ばれる抗うつ剤)とムコスタ(胃薬)を処方されましたが、怖くて飲めなかったそうです。
不眠は、ねつきが悪く、いやな夢をみて、眠りが浅く、夜中に目がさめるそうです。
既往歴として、10年前お父さんが亡くなられたときに、パニック障害になったそうです。
平成27年6月26日に漢方治療を求めてたつの市より当院を受診されました。
身長159cm、体重55kg、BMI21.8。
他の症状として、便秘・体がだるい・動悸・気分が沈むがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう;症例61、168、434、460、461、462参照)加味帰脾湯(かみきひとう;症例45、193、239、291、308、409参照)を合わせて一ヶ月分処方したところ、7月8日に来られ、「生理が始まる前に体調がすぐれないんです。」といわれましたので、加味逍遥散(かみしょうようさん);症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、317、318、326、330、336、349、356、368、371、378、381、391、395、399、405、407、416、419、425、429、430、441、451、464、466、477、491参照)と甘麦大棗湯を1日2回のんでいただき、加味帰脾湯を寝る前だけにのむようにしたところ、7月21日に来られ、「不安はあるにはあるが、ひどい不安感はなくなりました。3日に1回くらい眠れる日がでてきました。」といわれました。
8月25日に来られた時には、「寝つきがよく、30分以内には、寝れるようになりました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

493.舌痛症の漢方治療

次の症例は87歳女性です。
普段胃炎で胃薬を処方している患者さんです。
平成27年6月12日、「5日前より、舌が痛んで、何を食べてもおいしくない。」といわれました。
舌全体の色が赤っぽく(深紅色;健康な舌はやや赤みを帯びたピンクですが、体内に熱がこもり、水分が不足すると赤みが強くなる)、テカテカしておりました。
舌診について”の「陰虚」の舌と考えられました。
滋陰降下湯(じ いんこうかとう))六味丸(ろくみが ん;症例128、194、412参照)を合わせて3週間分処方しところ、7月2日に来られ、「少しましになりました。口がよく乾きます。」といわれました。さらに一ヶ月分処方しところ、8月7日に来られ、「舌の痛みは、すっかりよくなりました。食欲ももどりました。」といわれました。舌も正常にもどっておりました。

補陰剤の代表的な漢方薬が六味丸で、咳やのどの乾燥がある場合は滋陰降下湯や滋陰至宝湯などを用います。今回、咳はありませんでしたが、早く治るように両方を合わせてみました。六味丸+滋陰降下湯で、知柏地黄丸(ちばくじおうがん)という処方に近づけることができます。

漢方がお役に立ててよかったです。

滋陰降火湯について(下田 憲先生)

この滋陰降火湯というのは、麦門冬と天門冬の双冬組が入っており、若い人やあるいは急性疾患の麦門冬湯の状態に非常に似ていると思って間違いありません。ただし麦門冬湯の大事な特徴は、もう顔を真っ赤にして咳込む状態です。これは当然若くて体力があるからそこまで咳込めるのです。年を取って体力がなくなってきたら、そんなに咳込む力はありませんね。滋陰降火湯は、麦門冬湯ほどひどくはならないのですが、やはり明らかに痰の切れにくい咳で、咳込んでいてそれで痰が切れると束の間でも楽になります。麦門冬や天門冬の特徴は、せき込んでいるだけじやなくて、痰が切れると束の間でも楽になる、それが大事なのです。うんとせき込んでも 痰が出てこないといったら、また別の病証になってきます。
そして、四物湯の中の川芎は必要ないので入っていないのです。当帰、熟地黄、白芍は血を潤す作用です。それから、知母、黄柏というのはというのは非特異的な消炎剤です。知柏(ちばく)と言います。
普通のときは飲むとしたら八味地黄丸を飲んでいる人かなというタイプで、お年寄りの腎咳(症例161、194、412参照)によく使います。
お年寄りの腎咳とは変な言い方ですが、肺と腎の関係で若い人にも腎咳はあるからです。それは後で話しますが、お年寄りの腎咳は、腎の衰えでやはり全体が乾燥状態になってきていて、痰が乾燥し、そのために痰を切る力もないのです。だから滋陰降火湯の方というのは、だいたい診察室に入ってくると解ります。
腎が主体になっていますからやはり赤黒いです。だいたい黒い。それで咳を主症状として来ます。何よりも腎咳は(肝咳などもそうですが)、東洋医学的な治療じゃないと治らないのです。西洋医学的な治療が一番うまくいかないのが腎咳です。だからうまく当たると非常に喜ばれます。
滋陰降火湯の状態は、年を取ってだんだん腎が衰えて、腎陰が不足して心火が上がって、心火が肺を焼いて、そのために肺に熱を持って痰が切れにくくなっているのです。最初の出発が腎陰の不足なのです。いわゆる腎の虚が出発です。加齢に伴って腎陰が不足してくるというのは、年を取ると全員腎陰が不足するということではないのです。腎が弱い人がやはりそうなりやすいわけです。
そういう方というのは 支配色が黒なので、本当にこれは見慣れると分かります。先生たちが来ているときに何人かいましたね、黒い雰囲気があったのを覚えていますか。見慣れるともう本当に入ってきた瞬間に分かります。何となく黒い感じがします。

 

494.肝咳の一例(2)

症例180に続いて、肝咳の症例を載せます。

症例は58歳、女性です。普段不定期に胃腸炎等で来院されています。
「3週間前より、咳(1日3回くらいゲーというくらい咳き込む)が続きます。」といわれ、平成27年6月9日来院されました。
身長161cm、体重52kg、BMI20.1。
念のため胸部X線写真を撮りましたが、異常なかったため麦門冬湯(ばくもんどうとう;症例615参照)を1週間分処方しました。
しかし、全く改善しなかったようで、近くの耳鼻科を受診されましたが、「異常なし。」といわれました。
今度は総合病院の内科を受診され、「逆流性食道炎だろう。」といわれ、プロトンポンプ阻害薬(胃の壁細胞の プロトンポンプに作用し、胃酸の分泌を抑制する薬)を処されましたが全く効かず、次は気管支喘息かもしれないとのことで、ステロイド吸入薬を処方されましたが、これも全く効きませんでした。
7月31日再度来院されましたので、今度は麦門冬湯を1ヶ月分処方しました。
しかし、全く咳は止まらないため、8月6日に、「呼吸器専門の病院を紹介してほしい。」と来院されました。しかし、肺に異常がなければ受診しても意味がないため、隠れた病気がないかと胸部CTを撮ってみましたが、やはり全く異常はありませんでした。私は忘れていましたが、以前動悸がひどい時に、私が処方した加味逍遥散(かみしょうようさん)がよく効いたそうです。
この方の舌を見ると、舌尖紅潮(症例72、141参照)を認めました。
滋陰至宝湯(じいんしほうとう;症例280参照)を8月11日に2週間分処方したところ、8月31日に来られ、「ほとんど咳が出なくなりました。」といわれました。私が「どうもストレスから来る咳のようでしたね。」といいますと、詳しくは語られませんでしたが、「いろいろストレスが多いんです。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

495.産後の乳汁分泌不全の漢方治療

症例は32歳、女性です。
平成25年4月24日、頭痛・肩こりの漢方治療を求めて姫路市より当院を受診されました。
身長156cm、体重56kg、BMI23.0。
九味檳榔湯(くみびんろうとう;症例150、345、346、348、349、406、422、476参照)加味逍遥散(かみしょうようさん);症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、317、318、326、330、336、349、356、368、371、378、381、391、395、399、405、407、416、419、425、429、430、441、451、464、466、477、491、492参照)で調子よくなられ、薬を続けておられました。
平成26年12月24日に来院されたときに、「妊娠した。」といわれましたので、薬を当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん;症例14、158、241、249、254、265、330、338、339、387、400、401、423、452、488症例)に変更し、途中便秘気味になられ、大建中湯(だいけんちゅうとう;症例44、123、396参照)を処方したくらいで順調に経過し、平成27年8月13日に2480gの男の子を出産されました。
8月20日に来院されたときに、「乳汁の出が悪い。」といわれましたので、甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう;症例61、168、434、460、461、462、492参照)を処方したところ、9月5日に来られ、「たくさん出るようになりました。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

乳汁分泌不全について(佐野 敬夫先生)

抗精神病薬の中でもスルピリドは乳汁分泌作用のあることで知られているが、甘麦大棗湯も同様の機序で乳汁分泌の促進に作用するのではないだろうか。
私の経験ではスルピリドの方が乳汁分泌の促進作用は確かである。
しかし、母親は薬の内容を知ると安心して甘麦大棗湯を選択する場合が多い。
(実地医科のためのTHE KANPO,No6,2000.p6)

 

496.月経前症候群+気虚の漢方治療

症例は31歳、女性です。
学校の先生をされております。
月経前症候群の診断で、婦人科で当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん;症例14、158、241、249、254、265、330、338、339、387、400、401、423、452、488、495症例)の投薬をうけておられますが、”朝起きられず、1日中ボーとして疲れがとれない。体がむくむ”ため、平成27年5月19日に漢方治療を求めてたつの市より当院を受診されました。
身長164cm、体重56kg、BMI20.8。
他の症状も多彩で、便秘・快便感がない・腹がはる・胸が痞える胃がもたれる・朝方の頭痛・肩こり・体がだるい・疲れやすい・イライラする・めまい・立ちくらみ・手足の冷え・気分が沈む・ねつきが悪い・いやな夢をみる・眠りが浅い・生理痛が強いなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。また紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、「瘀血」(おけつ)体質もはっきりとしておりました。
当帰芍薬散はそのままで、「気虚」に対して六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318、350、352、354、365、391、411、419、430、441、447、450、452、459、470、474、477、478、480、488、491参照)と強壮・強精作用のある、コウジン末(症例449参照)を加え一ヶ月分処方しところ、6月17日に来られ、「最初はよかったが、生理前にガタンときて、イライラして友人とケンカしたり、落ち込んだり、便秘がひどかったりしました。」といわれましたので、当帰芍薬散を加味逍遥散(かみしょうようさん);症例72、141、147、165、169、177、178、182、193、195、196、201、204、210、213、214、224、229、230、243、255、256、258、263、271、272、273、277、280、295、297、317、318、326、330、336、349、356、368、371、378、381、391、395、399、405、407、416、419、425、429、430、441、451、464、466、477、491、492、495参照)に変えてさらに続けていただいたところ、9月5日に来られ、「便秘以外はとても調子よくなりました。今まで生徒が着替えをしている間も立っていられなかったのがとても元気になりました。」といわれました。便秘も自転車通勤をしているときには改善していたそうなので、運動を少しずつするよう勧めさせていただきました。

漢方がお役に立ててよかったです。

497.八味地黄丸による花粉症(アレルギー性鼻炎)の漢方治療 (2)

症例181に記載しましたが、私自身花粉症があり、それが八味地黄丸(はちみじおうがん;症例42、58、161参照)により、症状がでなくなりました(今はピーク時でもマスクをせずに自転車に乗れます)。

症例は52歳、女性です。
平成25年5月15日に体調不良の改善目的で、漢方治療を求めて神戸市より当院を受診されました。
身長159cm、体重63kg、BMI24.9。
症状は、便秘・頻尿・残尿感・汗をかきやすい・手足が冷える・肩こり・腰痛・生理の量が多い・生理痛が強いなどがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。また紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、「瘀血」(おけつ)体質もはっきりとしておりました。
腹診では下腹部が軟弱無力で、圧迫すると腹壁は容易に陥没し、押さえる指が腹壁に入るような状態(小腹不仁(しょうふくふじん))を認め、腎虚(腎虚については症例58、128、161、194、216参照)と考えられました。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん;症例14、158、241、249、254、265、330、338、339、387、400、401、423、452、488、495症例)八味地黄丸を合わせて処方したところ、平成25年9月11日に来られた時には、「生理痛もなく、腰痛もなく、頻尿や残尿感も改善されました。」といわれました。
調子良いので、そのまま薬を続けられ、2年後の平成27年9月2日に来られた時に、「毎年春にひどい花粉症が出るのに、今年は全く出ませんでした。」といわれました。

漢方がお役に立ててよかったです。

498.抜け毛の漢方治療(2)

症例458に続いて抜け毛の症例です。
次の症例は28歳、女性です。
平成26年10月27日に、1年前より冷えと生理不順(生理が48日周期)のため漢方治療を求めて赤穂市より当院を受診されました。
身長163.5cm、体重53.5kg、BMI20.0。
他の症状として、便秘、下痢の繰り返し・尿が出にくい・顔や足がむくむ・汗をかかない・肩こり・にきび・体がだるい・疲れやすい・イライラする・くしゃみ、鼻水が多い・手足の冷え(足のほうがより冷える)などがあります。
この方の舌を見ると、厚くはれぼったい感じがし、また両側の舌の縁に、歯型が波打つようについていました(歯痕舌(しこんぜつ))。
六君子湯(りっくんしとう;症例97,154、178、179、182、202、248、258、280、291、301、318、350、352、354、365、391、411、419、430、441、447、450、452、459、470、474、477、478、480、488、491、496参照)と強壮・強精作用のある、コウジン末(症例449参照)と当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう;症例92参照)で、平成27年4月28日には、冷えは少しまし(下半身のみ)になられましたが、抜け毛が多い(3月まで職場のストレスが多かったそうです)といわれました。6月19日には、「相変わらず髪の毛が抜けて、足がむくみ、下半身が冷える。」といわれましたので、この時点でようやく、腎虚(腎虚については症例58、128、161、194、216参照)ではないかと気づき、当帰四逆加呉茱萸生姜湯を 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん;症例47参照)に変えたところ、「抜け毛がなくなり、冷えもよくなりました。体がぽかぽかします。体も疲れにくくなりました。今までの薬で一番いいです。」といわれました。
生理不順は、婦人科で処方された薬で調子いいそうです。

漢方がお役に立ててよかったです。

髪は東洋医学では血余(けつよ)と言います。「血」が不足し、循環が悪くなると、髪を美しく保つことができません。
髪は、「腎」とも密接な関係があります。腎虚になると、髪の毛が少なくなることだけでなく、髪につやが無くなり、白髪が増えます。
そのため髪の毛を健やかにするためには、「血」「腎」を補う治療をすればよいことになります。

499.便秘の漢方治療

次の症例は19歳、女性です。
高校生の頃より便秘があり、市販の便秘薬で無理やり出している状態で、漢方薬で何とかしたいと、平成27年4月27日に来院されました。
身長166cm、体重53kg、BMI19.2とやせを認めます。
他の症状として、快便感がない・腹がはる・腹が鳴る・顔がむくむ・のぼせやすい・イライラする・手足の冷え(足のほうがより冷える)などがあります。
また生理不順があり、低用量ピルを処方されています。
この方の舌を見ると、紫がかり、舌の裏側の静脈が膨れ、「瘀血」(おけつ)体質がはっきりとしておりました。
「瘀血」に使う桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん;症例67参照)大建中湯(だいけんちゅうとう;症例44、123、396参照)を2週間分処方したところ、5月15日に来られ、「便が出ません。」といわれましたので、桂枝茯苓丸加薏苡仁を桃核承気湯(とうかくじょうきとう)に変えたところ、6月10日に来られ、「毎日便が出て、たまに少し下痢するくらいです。」といわれました。次に7月10日に来られた時には、「のぼせがましになってきました。」といわれました。
次に8月11日に来られた時には、「のぼせがなくなりました。便も毎日出て気持ちいいです。」といわれました。
大建中湯は、腹が冷え、痛まないように合わせてみました。

漢方がお役に立ててよかったです。

桃核承気湯について(下田憲先生)

これは承気湯と言われる様に、承気湯類の特徴を持っています。
気のめぐりが悪くて心下の附近につかえる様な感じがあって、便秘をしていて、激しくイライラしています。慢性疾患の時は、このような状態だったら桃核承気湯より も通導散を使うことのほうが多いのです。通導散の方がもうちょっと慢性疾患に効く成分を多く含んでいるのです。意外と桃核承気湯は慢性疾患に使うよりも、打ち身・捻挫などの急性期の後で、非常に強い便秘と急拍症状を出すことがあるのですが、それに使うことのほうが回数としては多いのです。
ただ長く飲んでいるのはほとんど例外なく若い子です。ある程度以上の年の人で、桃核承気湯になる人はめったに居ません。若い子でイライラしていて、気の上衝 というより、本当に気の滞りがあります。気の上衝と気の滞りとはどこが違うのか、この附近は非常に難しいのです。桂枝茯苓丸の気の上衝は見た感じ上気しているのもあるのですが、時々、衝脈に向かって突き上げてくる形で、常時ではないのです。下手につっつくと爆発するという、さわらぬ神に崇りなしという感じで接していればいいかなという面があるのです。
承気湯の状態というのは常に気がめぐっていないので、大爆発もしないけれども、いつもイライラしているとい う印象があります。承気湯類は皆そうです。桃核承気湯は根底に血の異常があるのですが、他の承気湯類は血に関係しないで、気そのものがめぐらないでイライラしているという面があります。
これより強い大承気湯に婦人科薬を配合したのが通導散です。
通導散の場合はやはりいろいろな薬味がいっぱい入っており、効果が出るまで少し時間がかかります。桃核承気湯、桂枝茯苓丸、大黄牡丹皮湯などの薬味の少ない薬は、合っているか合っていないかが一服で分かります。
合っていなければ一服で も具合が悪くなります。合っていれば一服でまず症状が楽になってきます。一服か二服飲ませて、患者さんが、「この薬はいやだな。」と言ったら、自分の診断が間違っていると理解してかまいません。合っていれば本当にすぐ楽になってきます。そんなに時間のかかる処方ではありません。

桃核承気湯については、こちらもクリック画像の説明みんなの漢方

500.不眠の漢方治療

次の症例は50歳、女性です。
うつ病で心療内科に通院中(ジェイゾロフト;抗うつ剤、ワイパックス;抗不安薬、デパス;抗不安薬、ベンザリン;睡眠薬)も体調がすぐれず、平成23年11月21日より、加味逍遥散(かみしょうようさん)を補助として投与し、1年くらいで、西洋薬が必要なくなった患者さんです。
調子はずっと調子よかったのですが、平成27年9月9日に来られた時に、「最近夢をみることが多く、熟睡できず、不安感も強いです。」といわれました。よく聞くと、「生あくびがよくでる。」とのことでしたので、甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう;症例61、168、434、460、461参照)を追加したところ、10月2日に来られ、「とてもよく効きました。よく眠れます。」といわれました。

典型的な甘麦大棗湯の症例でしたので、載せてみました。
甘麦大棗湯は不眠にもよく使い、不安感が強く、夢が多い・悪夢をよくみる人によく効きます。
また、症例461にも書いておりますが、あくびがよく出る人によく効きます。

漢方がお役に立ててよかったです。