妊娠をするためには、胎児を育てる子宮に、エネルギーである『気』や『血』が充分に届き、めぐる必要があります。また、子宮が胎児を保つ力を充分に持つことも必要です。これがうまくいかないと、妊娠出来なかったり、流産を起こすことになります。

『気』や『血』が少ない時は子宮に充分届きませんので、『気』や『血』を増やす治療をします。
『気』や『血』は、中医学でいう「脾(ひ)」、つまり胃腸で作られるため、まず胃腸を丈夫にすることが一番大切です。
不妊治療で有名な寺師先生は、「脾胃」は根で、「根がなければ卵巣はしおれてしまう。」と、説明されております。四君子湯(しくんしとう)や六君子湯(りっくんしとう)などを使います。

また、『気』や『血』の流れを邪魔するものが存在する時も『気』や『血』は子宮に届きません。
邪魔をするものとしては、冷えや、粘って流れを邪魔する痰湿(たんしつ)、『血』を止めて邪魔する瘀血(おけつ)、うつうつして気を止める気滞(きたい)などがあります。

冷えは川の流れを凍らせるように、『気』や『血』の流れを止めてしまいます。治療には真武湯(しんぶとう)などの暖める漢方薬を使います。

『痰湿』に関しては、古典に「太った人は水気が多く、体の脂が充満して子宮を圧迫している。それで痰をとってこの子宮の圧迫をとったら子供はできる。」と書いてあります。

『瘀血』の治療は主に桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などで、「古血(ふるち)」を出して、血液をきれいにします。

『気滞』という状態で、『気』が止まれば、『血』も止まってしまい、子宮には届きません。治療はストレスを減らしたり、『気』を強制的に流す、加味逍遥散(かみしょうようさん)などの漢方薬を使います。

漢方では生殖に最も重要な臓器は「腎(じん)」とされています。
この「腎」が弱いと子宮自体が弱くなりますので、その時は「腎」を強くする漢方薬で治療します。

実際の不妊症はこれらの要因が単独で存在することは少なく、いくつもの要因が複雑にからまっており、診断が最も重要になってきます。

男性の場合は、精子を作る能力が落ちている場合が多く、漢方的には「腎」の力を高める、八味地黄丸(はちみじおうがん)や桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)などの漢方薬を使います。

 

不妊症の漢方治療については、

当院の漢方著効例
の症例14
当院の漢方著効例6
の症例254
当院の漢方著効例10
の症例452
当院の漢方著効例14
の症例655、660、665
当院の漢方著効例15
の症例706
当院の漢方著効例16
の症例766(男性不妊症)

を参照して下さい。

症例660と706は2人目不妊の症例です。